超ISO企業研究会

これまでの活動

Home *TQM9000発展への解説ポイント
  29.効果的な改善実施のポイント
発展表  改善へ


(1) 「改善」の対象を「製品」までひろげる
ISO9001:2000の「継続的改善」は次のような要求となっています。


品質方針、品質目標
監査結果
データの分析
是正処置
予防処置
マネジメントレビュー
QMSの有効性の

継続的改善


ISOでは、このように「改善」の対象を「品質マネジメントシステムの有効性」に限定していますが、これをさらに効果的にするには、「システム」だけでなく、「製品」の改善(品質向上)を目指すことが必要です。

企業の競争力は、製品の競争力そのものです。ISOでは、「顧客の満足」をさほど高いレベルに設定していません。しかしこれに甘んじることなく、現状よりももっと良い、他社よりも高いレベルの品質を目指した改善を明確に意識して進めていくことが重要です。

また、改善の手段として6つの事項を並列して挙げていますが、これらを「改善の流れ」として明確に意識して活動を進めていくことが必要です。ISOの要求事項をベースにした「改善」の流れを整理し、その目的として「製品の改善」を追加して図示しました。


付図29-0 ISOをベースにした「改善」の流れ



この図からも、改善活動には次のようなものがありことがわかります。

[1] 品質方針・品質目標を定め、この達成に向かって進める改善活動
(品質方針、品質目標)

[2] 「顧客満足」を適切にとらえ、この情報を"データ分析"して取り組むべきテーマを明確にして取り組んでいく改善活動
(顧客満足)

[3] 内部監査を主体にして、システム上の問題点を明らかにしてこれを改善していく活動
(内部監査)

[4] マネジメント・レビューを活用して、システムや製品の改善テーマを明確にしてこれに取り組んでいく活動
(マネジメント・レビュー)

[5] 社内で得られる品質情報や、供給先の品質や評価の情報を収集して、この"データ分析"をして取り組むべきテーマを明確にして取り組んでいく改善活動
(予防処置)

[6] 顧客からの苦情や、発見された不適合に対して、完全な再発防止対策を図ることでシステムや製品の改善を図っていく活動
(是正処置)


これらの活動を効果的に行って行くための、それぞれに共通する基本的な事項は次の通りです。


(2) QCストーリーを活用して「管理のサイクル」を回す
ISOでいう「継続的改善」とは、「顧客の満足に向けて絶え間ない活動」といえますが、やはりこの改善の考え方は、下図のような、「維持」と「改善」の階段を一歩一歩着実に上がってレベルをアップしていく活動でありたいものです。

図:管理のサイクル


そのためのポイントとなるのが、「P-D-C-Aの管理のサイクル」を確実にまわす取り組み方です。ここで「維持」のための管理は、標準を文書できちんと決め、これにしたがって実行して、標準とおりに実行しているかどうかをチェックして、ギャップがあればこれを是正する活動(この場合はPDCAサイクルの代わりにSDCAサイクルと言うことがあります)であり、まさにこれまでの1994年版のISOシステムそのものです。2000年版の規格では、これに「改善」のサイクルも加わったわけですが、このような管理のサイクルを明確にはしていません。私たちは、この改善のためのPDCAの管理サイクルをしっかりと意識してまわして、システムや仕事のやり方、そして製品の品質を着実に上げていくことが大事です。これを効果的に行うのが、「QCストーリー」といわれる問題解決の手順です。この手順を、是正処置予防処置は当然のことながら、さらには品質方針・目標を達成する活動など、あらゆる場面で活用していくように心がけましょう。


付図29-1 QC的問題解決手順


(3) QC七つ道具などのQC手法を活用する
QC的問題解決手順の中で特に大事なのが、「現状の把握」と「解析」です。事実に基づいてしっかりと現状を把握し、問題の原因と結果の因果関係をできるだけ定量的につかまえることなしには、真の改善は達成されません。高度な手法はともかく、まずは基本的なQC七つ道具を完全にマスターして、これを活用することが近道です。

そのためには、まず「教育」が必要です。そして管理者が、これを率先して使うことから始まります。
詳しいことは、「28.統計的手法活用のポイント」を参照してください。


付図29-2 QC七つ道具


(4) 改善の成果を標準化し、水平展開もする
せっかく苦労して行った「改善」も、うっかりして再び坂道を転げ落ちて"もとの木阿弥"になってしまっては大変です。こうならないように、しっかりと「歯止め」をかけておく必要があるわけですが、まずは「標準化」をしておきましょう。このような活動を繰り返して、会社のレベルがどんどん上がっていくわけであり、この「標準化」はまさに会社の財産と言えるでしょう。

また、効果をより大きくしていくための有効な活動は「水平展開」です。 ひとつの改善で得られた情報は、かならず、その結果を同じように活用できるところはないだろうかと考えるくせをつけることが大事です。そのためには、「30.是正処置実施のポイント」「31.予防処置実施のポイント」で紹介するように、レポートの様式で歯止めをかけておくことも有効な手段です

水平展開は、以下の点に着眼して考えるといいでしょう。

[1] 同じような構造の機械はないか
[2] 同じような作業方法をしているものはないか
[3] 同じような材料を使っているものはないか
[4] 同じような設計をしている製品はないか


(5) 「効率」を意識した改善を進めよう
ISOの「継続的改善」は、「システム」を対象としたものであることは最初に述べたとおりですが、もうひとつの特徴はその「有効性」に関しての改善です。つまり、「効率」が少しくらい悪くても「効果」があがればよいのです。しかし、これに甘んじてあまり考えもせずに形だけの処置を打っていくといつのまにか重いシステムにどんどんなって行ってしまうから注意が必要です。内部監査などで発見された「不適合」は、システムのやりにくさを発見するチャンスです。もっとやりやすい方法はないか?という視点で考えて、「効率」をアップする改善にも取り組みましょう。また、認証を取得するときには、理解不足やつい審査対応のために重くなってしまいがちなので、取得した後には、一度は、システムのスリム化の改善のために、組織的な取り組みをするとよいでしょう。