超ISO企業研究会

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  30.是正処置実施のポイント
発展表  是正処置へ


ISOでは「是正処置」について以下の事項を規定しています。
【1】不適合(顧客からの苦情を含む)の内容確認
【2】不適合の原因の特定
【3】不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の評価
【4】必要な処置の決定及び実施
【5】とった処置の結果の記録
【6】是正処置において実施した活動のレビュー

不適合が発生したら、真の原因を追及し、原因に対する効果的な対策を考え、再発防止の対策を確実に打っていくこと、これをしっかりとやることが、品質管理の基本中の基本です。ところがこれが、なかなかできないのです。ISOは、この基本を徹底するのに大変に有効ですが、これをさらに効果的にするためには以下のようなことに留意することです。なお、ここでは、製品や、製品の実現プロセスに関する是正処置に絞って説明します。


(1) フロー図を活用して、組織の力を集めて体系的に実施する
不適合が発生すると、誰が受け付けて、誰が是正処置の指示をして、誰が解析をして、誰がその検証をするのが一番効果的なのでしょうか?言い換えると、会社の持てる力を一番発揮できる人は誰なのでしょうか?情報はどのように流れると、一番スムーズに流れていくのでしょうか?是正処置の流れをフロー図に整理してみましょう。フロー図で滞り無く流れるようでないと、実際の業務の中ではましてや、うまく行くはず有りません。

線があっちへ行ったり、こっちへ行ったり複雑な流れになってないかもここでは大事なチェックポイントです。責任と権限を重複させずに、シンプルなしくみにするのもこの際にやっておくとよいでしょう。

この流れの中で「キー」となるのは、是正処置の要否の決定者です。発生した不適合すべてに対して、完全な再発防止対策が図れることに越したことはないのですが限りある時間の中で、すべての不適合に対応できない場合もあります。そんなとき、その問題の大きさを冷静にジャッジできる人がこれをやることが重要です。

また、進捗を管理する人も決めておくと良いでしょう。いったんやると決めた不適合の是正処置は、やり遂げなければ、次第に形骸化してきます。

以上の事柄を考慮した、基本的な是正処置の例を次に示します。これを参考に、あなたの会社のフロー図を作ってみてください。


付図30-1 是正処置の基本フロー図の例


(2) 報告書様式の工夫して「QC的問題解決手順」を確実に実行する
フロー図を作ったら、次は、その書式の通りに流れる報告書様式の設計です。ここでは、「不適合品処理のための報告書」と、「再発防止対策書」の報告様式は別にした方が良いでしょう。それは、せっかく高い代償を払って得られたこの情報は、会社のこれからの財産としなければもったいないからです。「再発防止対策書」は、会社の財産ですから、確実に記録し、大切に保管しておきましょう。

この様式は、問題解決のための「QC的問題解決手順」を基本にします。是正処置を効果的に行うためには、改善のための「管理のサイクル(PDCA)」をしっかりとまわすことが大事です。これを確実に実行するために考えられた「QC的問題解決手順」を基本にして、報告書の書式を作っておけば安心です。

不適合品処理のための報告書の例として「不合格発生処置報告書」を、是正処置としての再発防止対策書の例を次に紹介しておきます。


付図30-2 「不合格発生処置報告書」の例


付図30-3 「再発防止対策書」の例


(3) 統計的手法の活用
QC的問題解決手順の中で特に大事なのが、「現状の把握」と「解析」です。事実に基づいてしっかりと現状を把握し、問題の原因と結果の因果関係をできるだけ定量的につかまえることなしには、真の改善は達成されません。高度な手法はともかく、まずは基本的なQC七つ道具を完全にマスターして、これを活用することが近道です。

是正処置を効果的に行うためには、この簡単な統計的手法をうまく活用することがポイントです。多くの問題は、高度な手法を使わなくても、「QC七つ道具」の適切な活用で大きな効果があります。この活用の方法は、「28.統計的手法活用のポイント」を参照してください。


(4) 再発防止対策は標準化し、水平展開もする
せっかく苦労して原因を探り当て、その再発防止の対策を打って「改善」を達成しても、うっかりして再び坂道を転げ落ちて"もとの木阿弥"になってしまってはがっかりしてしまいます。こうならないように、しっかりと「歯止め」をかけておく必要があるわけですが、まずは「標準化」をしておきましょう。このような活動を繰り返して、会社のレベルがどんどん上がっていくわけであり、この「標準化」はまさに会社の財産と言えるでしょう。

また、効果をより大きくしていくための有効な活動は「水平展開」です。ひとつの改善で得られた情報は、かならず、その結果を同じように活用できるところはないだろうかと考えるくせをつけることが大事です。

水平展開は、以下の点に着眼して考えるといいでしょう。

[1] 同じような構造の機械はないか
[2] 同じような作業方法をしているものはないか
[3] 同じような材料を使っているものはないか
[4] 同じような設計をしている製品はないか