超ISO企業研究会

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  31.予防処置実施のポイント
発展表  予防処置へ


ISOでは「予防処置」について以下の事項を規定しています。

【1】起こりうる不適合及びその原因の特定
【2】不適合の発生を予防するための処置の必要性の評価
【3】必要な処置の決定及び実施
【4】とった処置の結果の記録
【5】予防処置において実施した活動のレビュー

不適合を「未然に予防する」ということは、TQMの重要な考え方の一つです。ISOもこの要求事項はありますが、その手段についてはなにも触れていません。実際の審査に当たっても、なかなかこの実施例ができずに困っている企業が多いのではないでしょうか?「予防処置」を効果的に実施するには、以下のようなことに留意しまよう。なお、ここでは、製品や、製品の実現プロセスに関する是正処置に絞って説明します。


(1) フロー図を活用して、組織の力を集めて体系的に実施する
予防処置は組織のもつ力を集めて、計画的に、体系的に実施することで大きな効果につながります。是正処置の場合と同様に、まずはフロー図を作って、その流れを整理してみましょう。

予防処置の打ち方は、大きくは2つのやり方を考えるとよいでしょう。

[1] ひとつは、顕在化した不適合をきっかけとして、組織内の多くの人の知識と経験を集めて、「起こりうる不適合やその原因」を考えて、手を打つことです。具体的には、毎月もしくは毎週とかの周期で、品質問題をテーマとして打ち合わせを行う場を設定し、この中で、発生した不適合について組織内の関係する人たちで、今一度検討してみることです。その中で、予防処置を決定して実施していくのです。「是正処置」を打ったときに同時に検討する「水平展開」は、そのうちの代表的な例でしょう。

[2] もうひとつは、ある一定の時期(半年とか1年間とか)で収集した品質データを分析して、その結果を元に品質向上(予防処置)のテーマを決めてこれを実施していくことです。テーマによっては、「重要品質問題」として登録し、チームを組んで解決していくことも織り交ぜるとさらに効果的になるでしょう。また、テーマの大きさによって「品質向上計画書」を作成していくことも必要です。特に大きなテーマは、品質方針・目標の管理活動の中で取り組んでいくと良いでしょう。

以上の事柄を考慮した、基本的な予防処置の例を次に示します。これを参考に、あなたの会社のフロー図を作ってみてください。


付図31-1 予防処置の基本フロー図例


(2) 報告書様式の工夫して「QC的問題解決手順」を確実に実行する
フロー図を作ったら、次は、その書式の通りに流れる報告書様式の設計です。組織内の知識と経験の集約した、この「予防処置(品質向上)」は会社の貴重な財産ですから、確実に記録し、大切に保管しておきましょう。

この様式は、問題解決のための「QC的問題解決手順」を基本にします。予防処置を効果的に行うためには、改善のための「管理のサイクル(PDCA)」をしっかりとまわすことが大事です。これを確実に実行するために考えられた「QC的問題解決手順」を基本にして、報告書の書式を作っておけば安心です。

このような予防処置の一環として実施される「品質向上報告書」の例を次に示します。


付図31-2 「品質向上報告書」の例


(3) データ分析と統計的手法の活用
QC的問題解決手順の中で特に大事なのが、「現状の把握」と「解析」です。事実に基づいてしっかりと現状を把握し、問題の原因と結果の因果関係をできるだけ定量的につかまえることなしには、真の改善は達成されません。高度な手法はともかく、まずは基本的なQC七つ道具を完全にマスターして、これを活用することが近道です。

予防処置を効果的に行うためには、この簡単な統計的手法をうまく活用することがポイントです。多くの問題は、高度な手法を使わなくても、「QC7つ道具」の適切な活用で大きな効果があります。この活用の方法は、「28.統計的手法活用のポイント」を参照してください。

以上のことは、是正処置の場合と同じですが、予防処置の場合は特に、7.4項のデータの分析とのつながりが重要です。予防処置としての「品質向上」のテーマは、以下のような情報を計画的に収集し、適切な手法で分析して、真に効果的なテーマを取り上げることからスタートします。


[1] 顧客からの情報(クレーム、苦情、顧客満足) [2] 検査の結果情報(受入検査、工程内検査、最終検査) [3] 工程情報(工程異常、工程チェック情報) [4] 設計情報(設計審査、設計検証、妥当性確認、初期流動品質)


また、これらの情報を分析するには、以下の手法を活用することが効果的です。

[1] 推移グラフで傾向を探る [2] パレート図で重点を探る [3] ヒストグラムで工程能力を把握する [4] 管理図でロット間のばらつきを確認する


(4) 対策は標準化し、水平展開もする
せっかく苦労して「品質向上」を達成しても、うっかりして再び坂道を転げ落ちて"もとの木阿弥"になってしまってはがっかりしてしまいます。こうならないように、しっかりと「歯止め」をかけておく必要があるわけですが、まずは「標準化」をしておきましょう。このような活動を繰り返して、会社のレベルがどんどん上がっていくわけであり、この「標準化」はまさに会社の財産と言えるでしょう。

また、効果をより大きくしていくための有効な活動は「水平展開」です。ひとつの改善で得られた情報は、かならず、その結果を同じように活用できるところはないだろうかと考えるくせをつけることが大事です。

水平展開は、以下の点に着眼して考えるといいでしょう。

[1] 同じような構造の機械はないか
[2] 同じような作業方法をしているものはないか
[3] 同じような材料を使っているものはないか
[4] 同じような設計をしている製品はないか