超ISO企業研究会

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  17.工程管理のポイント
発展表  製造及びサービス提供へ
製造及びサービス提供の管理は、「品質を工程で作りこむ」ための極めて重要な活動ですが、規格の要求は簡潔になっています。すなわち、
【1】 製造及びサービス提供を計画し管理された状態で実行すること(7.5.1)
【2】 いわゆる特殊工程の管理(7.5.2)。
工程で品質を作りこむには、これらの活動を適切に管理することが非常に重要です。管理の手順は大きく分けて、次の6項目です。

(1)工程管理体系の明確化
製品にどのような特性が必要か、工程をどう設計し計画するか、作業をどのように定め手順化するか、それをどのように指示するか、運営管理、設備をどのように管理するか、変更をどのように管理するか、教育訓練をどのように行いその結果を評価するか,作業環境をどのように決め管理するか、などを検討し必要に応じて標準化・文書化します。

(2)重要な作業の標準化,特に技術標準の作成
品質に影響する作業を明確にし、その手順を標準化します。ここで標準化には「文書化」する場合と、やり方を決めるが文書化はしないで「要員の教育訓練」による場合の二通りがあります。これを明確にし、後者の場合にはその教育訓練を明確にして、確実に実行します。

作業の手順を決めるときに、重要なのは「なぜそうするか」という根拠がしっかりしていることです。そのために、品質に重要な影響を与える作業に対して、その根拠を示す「技術標準」ができていることが大切です。「技術標準」がどれだけできているかが、製品実現の実力のレベルを示すといっても過言ではありません。

なお手順書を作成するときは、原案を実際に作業する人達にも参加いただくこと、できるだけ1件1葉と簡潔にし、図や写真などを活用して分かりやすいものにして下さい。また、新しい標準を制定したときには、職場でそのねらいや重要なことを、作業される人達に説明し、しっかりと理解していただくことが必要です。規格の(6.2.2:力量認識)を満たすためにも必要なことです。

また重要な標準を定めたあとには、適用後の結果を調べて、そのねらいとした結果が達成できているか、改める必要はないかなど、「標準化に対するPDCAをしっかり回す」ことも大切です。

なお営業や販売などの分野では、個々の顧客や商品による仕事の進め方に違いが大きく、その結果従業員各個人に経験が蓄積され、かつそれを文書化するのが工場に比べて進んでいない場合が多い様です。しかしこれは組織にとって大変な損失です、各人の持つ知識、経験を共有化して全員の力量をより早く、より高いものにしたいものです。 そのためには、先ず例えば営業活動であれば、その基本的な流れをフロー図にし、それに加えて顧客による違い、留意事項などをを個別にノーハウ集、ポイント集などの形で文書化し、活用すると良いでしょう。これは、新人や転入者などへの教示としても活用できます。

(3)QC工程表の作成と活用
QC工程表は、製品実現プロセス全体のレベルを示す大変重要なものです。すべての製品に対して作成する必要はありませんが、重要な製品に対して是非QC工程表を作成してください。

1)QC工程表の作成 QC工程表の作成においては、管理項目・管理単位(例えばロットの大きさ)の目の細かさ、管理水準の巾(上限と下限)、重点管理項目の識別(重要な特性に対しては管理図を作成する)、過去のトラブルの有無、異常時の処置など、活用できるQC工程表とするための情報を入れることが大切です。このQC工程表を見ることで、規格の要求する7.5.1のa)~f)項を確認することができます。



付図17-1 QC工程表の作り方


2)QC工程表の活用 QC工程表は、それを使って製品実現の工程がどれだけしっかりしているか、どこに弱点があるかを把握し、トラブルが発生する前にそこを補強してトラブルを予防するための道具です。 管理者の皆さんは、作成されたQC工程表をもとに、自社の工程に対して必要十分な管理が行われているか、過去の経験が活かされているか、現状のままで良いかなどを確認し、必要であれば問題が発生する前に処置をとってください。また、不幸にしてトラブルが発生したときには、なぜそれが起こったか、どこが弱点であったかを追究する道具、すなわちPDCAを回す道具としても活用できます。

(4)適切な設備の管理
品質に重要な影響を与える設備については、その新規受け入れ時の検証・承認、適切に運営するための保守・保全、変更するときの管理手順を明確にし、文書化することが望まれます。

保守・保全は、使用する部門が日常自主的に行う項目と、保守部門が管理する項目を明確にして、計画的に行います。これらの管理を効率的に、かつもれなく行うためにチェックシートなどが大変に有効です。また、行ったチェックした結果は、8.2.3項の「プロセスの監視及び測定」におけるインプットとして活用できます。

(5)変更管理と初期流動管理
重要な作業の手順は文書化などにより固定し維持しますが、改善や新製品・新技術の採用などのためにこれを変更することがあります。職場で非常にしばしば経験するのは、「改善のために行った」つもりの変更が、事前の検討が不充分であったために、思わぬトラブルを引き起こすこと、しかも実は社内にはそのことに対する知識があったというケースです。

このため、重要な変更に際しては組織の周知を集めて、それがマイナスに作用しないかを、事前に確認する「変更管理」の仕組みが必要です。ここでは、その変更の影響に関して、もっとも知識を持つ社内の部門・人材が参加するような仕組みとすることが大切です。

新しいことを始めるにあたって、決めた手順が完全に適切でないことは現実にあり得ることです。そのような場合、初期流動管理として最初の一定の期間を定めて、管理を精密に行って、ねらい通りの結果がでるか確認することも適宜行って下さい。

(6)特殊工程の管理
規格の7.5.2は特殊工程に対する要求です。プロセスの結果がその後の検査やチェックでは検証できない工程に対して、通常と異なる管理、たとえば作業条件の他に、設備や作業する人の認定などを行うことで対応します。特殊工程の例としては、溶接や熱処理などを対象としている事例があります。

規格では7.5.2のa)~e)項までについて、「適用できるものを」実施することを要求しています。特に新製品、新技術の適用に際して注意が必要です。具体的には


[1] 何が特殊工程であるかを明確にする。
[2] 明確にした工程に関する管理:管理項目・水準、要員の認定・教育・訓練とその記録、設備の認定・管理・保全条件などを定めて標準化する。
[3] 妥当性に関する判定基準を明確にし、記録する。
[4] QC工程表などを活用して、弱点のないことを確認する

などが必要です。また一度特殊工程として管理の手順を決めたあとに、システムの変更たとえば新設備の採用などがあれば、再度その手順が適切か見直すことも必要です。(妥当性の再評価)