超ISO企業研究会

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  22.TQMの顧客満足へ一歩踏み出すポイント
発展表  顧客満足へ


ISO9001では顧客満足について

【1】 顧客要求事項を満足しているかどうかに関して顧客がどのように受けとめているかについての情報を監視する。
【2】 この情報の入手及び使用の方法を決めることを要求しています。
TQMへの発展を目指す場合に注意しなければならないのは「顧客満足」という言葉そのものの意味合いの違いです。すなわち、ISO9001で使われている意味は「まあまあ、かそれ以上」つまり最低合格点のイメージですが、TQMでは「お客様に喜んでもらう」、「素晴らしいと評価してもらう」という意味合いで使われてきたという違いです。

したがって、ここでのテーマは「お客様に喜んでいただいているのだろうか?」ということについてどのように把握し、いかにその情報を生かしていくか、ということになります。最初に大切な点はお客様が皆さんに「何を望んでいるか」をきちんと把握する事にあります。ただし、これはそれほど難しく考えてしまう事はないでしょう。なぜなら皆さんは必ず自分が「お客様」である場面を持っているからです。例えばレストランに食事に行く場合、あなたは次のような「要求事項」を持つかもしれません。
  • メニューが店の前にあって頼みたい料理と予算が先に計算できる
  • 店に入ってから席につくまでの案内がスムーズである
  • 頼んでから料理が出てくるまでの時間が適度である
  • 温かい料理は温かく、冷たい料理は冷たい
  • 味付けが濃すぎも薄すぎもしない
  • 料理の素材を厳選して使っている
  • コップが半分くらいになると水を注ぎに来てくれる
  • 支払は現金、請求、クレジットカードから選べる
  • 新しいメニューを作り、何回いってもあきない
  • 新メニューができるとメールで連絡してくれる

  これらの要求に対して、レストランが「うまくやって」、あなたが素晴らしいと評価すれば、
  • また食事にいく、何回も行く
  • 友人に「いいお店」として紹介する

などの、「お客がお客を呼ぶ」という状態が実現するかもしれません。
再度強調したいのは、TQMの「顧客満足」はこのような状態を言っているのであって、「まあまあだね」ではない事です。

TQM顧客満足への発展の第一ステップではどのような活動をしていくかについて以下に述べます。


(1) お客様の評価を把握するべき項目を決める
レストランの例のようにお客様は色々なことを「要求」しています。したがってお客様の評価を体系化して把握する必要があります。それは例えば、下記のようなものです。

1)事前のお客様への情報提供
  • 製品やサービスの内容についてお客様にわかりやすく伝えているか
  • 注文の仕方についてわかりやすく伝えているか
  • 納期(リードタイム)について正確に伝えているか
  • 価格について正確に伝えているか
  • お客様に適切な提案を行っているか

2)製品やサービスそのものについての情報
  • 製品は要求を十分に満足しているか
  • 使い勝手は十分に良いか
  • 寿命は十分に持つか
  • 今後の改善の要望はあるか

3)製品の提供に関する情報
  • 注文の受付はスムーズであったか
  • 約束した納期は妥当なものか
  • 製品に対して価格は妥当であったか

4)事後のお客様との接点に関する情報
  • アフターサービスはきめ細かく行われたか
  • 交換用の部品は簡単に入手できたか
  • クレーム対応は十分に迅速であったか
  • お客様との対応窓口は十分にわかりやすいか

項目数が多くなりましたが、TQMへの発展の第一ステップとして網掛け部分の情報を捉えることから入ってみることも効果的と考えられます。「品質展開」という手法の活用も項目の設定には役立つと思われます。


(2) お客様の評価を把握する方法を決める
お客様が実際にどのように受けとめているかを把握するためには大きく分けて「こちらから情報を取りに行く」ものと「情報が入ってくるのを待っている」ものがあります。また、それぞれに具体的には次のような方法が考えられます。

□「こちらから情報を取りに行く」事例
 
1)お客様に「直接」聴く
  • 1項の項目に従ったアンケートやヒアリングを実施する
 
2)間接的に把握する
  • 新しいお客様の数
  • 顧客による紹介の件数
  • リピーターの率
 
□「情報が入ってくるのを待っている」事例
  • お客様からの苦情やおほめの言葉
  • お客様相談窓口の開設


(3) 情報を分析して、その情報を使用する部署(プロセス)へフィードバックする
情報はただ集めても意味がありません。大切な事はその情報を活動に生かすということです。(2)で把握した情報をどこで生かすかの整理をしてフィードバックし、「何かを変える」事が重要です。
 
例えば、アンケート調査で、「アフターサービス用のダイアルに電話してもお話中でなかなかつながらない」というような情報が入ってきた場合、サービス部門に伝えれば回線数を増やす(変化)かもしれません。一方、電話の件数を想定して回線数を決めた部門に伝えると、今後の電話件数の想定の仕方=手順を変える(変化)かもしれません。
 
製品そのものの機能や性能に関わる情報は、企画部門、設計部門、製造部門等に伝えられ、上記と同じような変化をもたらしていなければ意味がないと考えられます。




さてこれまで述べてきたことは、お客様に「まあまあだね」ではなく、「喜んでもらう」ための「顧客満足」を得るための情報収集の方法を述べてきました。しかし、この「まあまあだね」というレベルでさえ満足をさせないような事態が起きるとそれがまさに「クレーム」となるわけです。この「クレーム」の情報に対しては、次のような特別な配慮が必要となります。

(I)クレーム情報は、会社にとって決して楽しいものではないが、これを放置しておくことによる経営への大きな影響や、このこの情報を活かすことによるメリットを考えると、非常に重要なものです。この重要さを社員全体に徹底することが大事です。

(II)クレーム情報が潜在化しないようにするには、不特定多数のお客様を対象とするような製品では「お客様相談室」のような窓口を設定しておくことも重要です。また、クレーム情報は、必要事項がもれなく正確に把握される必要があります。そのために「クレーム処理票」の様式を決めて受付時にこれに記載しておくなどの工夫をすると良いでしょう。

(III)クレーム情報は、これを以下の点に留意して分析をしておく必要があります。

[1]現品を克明に調査し、必要に応じて現場で実地調査を行う

[2]原因は次のように多面的に究明をする。
a)欠陥発生のメカニズムと管理上の問題点
b)発生原因と流出原因
c)関連標準との関係
d)品質システム上の問題点

なお、クレーム分析の詳細については「超ISO企業」(2003年6月日科技連出版社より発刊)にも記載されています。