超ISO企業研究会

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  20.顧客の所有物管理のポイント
発展表  顧客の所有物へ


7.5.4「顧客の所有物」では、知的所有権を含む顧客の所有物に注意を払い、管理(識別、検証、保護・防護)することを要求しています。また万一、紛失・損傷などが起こったとき、又は使用に適さないことが分かったときは、顧客に報告し、記録を維持することも要求しています。

もちろん企業としては、紛失・損傷などが起こらないように予防していくことが大切です。なお、顧客が指定し、組織が顧客から有償で購入して使用する製品(原材料、部品など)は対象外として、7.4「購買」により管理してください。

また、防護とは、顧客の所有物が知的所有権などの場合に、その秘密事項が組織外に流出することを防ぐことなどが該当すると考えてください。


(1) 顧客の所有物を受け取り、使用するまでの手順を決めて文書化する
顧客の所有物を受け取り、使用するまでの手順を決めて文書化するとよいでしょう。
この場合、次の点を考慮してください。

[1] 手順の中に、顧客への報告のフローを明確にする。この報告には、紛失・損傷など、組織の責任によるもののほか、組織に搬入されたあとの、受け入れ検査などの確認行為で判明した不適合の報告も含めること。
[2] 必要に応じて、トレーサビリティが確保できるような管理を行うこと。
[3] 長期間保管する場合には、計画的に状態を確認すること。そのための帳票を定めること。


(2) 積極的に改善提案を行う
顧客の所有物の不適合に関しては、組織の自己責任による場合は、8.5.2「是正処置」、8.5.3「予防処置」により管理の改善を図るとともに、所有物そのものに問題の見つかった場合には、顧客に対して積極的に改善提案を行ってください。


(3) 顧客所有物に関する責任を明確にする
顧客の所有物に注意を払い、顧客の所有物の価値を保護するために、顧客の所有物に関係する責任を明確にするとよいでしょう。


(4) 顧客の所有物の識別、検証及び保護・防護を行う
提供された顧客の所有物の識別、検証、保護・防護を実施するために、具体的な手順(業務フロー等)を確立し、維持するとよいでしょう。


(5) 顧客の所有物の紛失、損傷の具体的手順を確立する
顧客の所有物を紛失、損傷した場合、顧客に報告し、記録を維持するために、具体的手順(様式を含む)を確立し、維持するとよいでしょう。また、使用に適さないと分かったときも同様の処置がとれるように、具体的手順の確立とその維持が重要です。

付図20-1 顧客所有物が使用に適さないときの記録の例


(6) 顧客の所有物を管理する
顧客に所有権のあるものすべてが対象になります。JIS Q 9001の解説では、加工外注での支給素材から、開発環境提供、テスト機器、技術・知識までも含まれるとしています。また、知的所有権も対象とされ、「盗み見られた知識・情報」は物理的には何も変わっていないものの、「損傷」に取り扱うとしている点は注意を要します。

付図20-2 顧客所有物の管理台帳の例


(7) QCDへの適用を行う
必要に応じ、Qだけでなく、C(コスト)、D(量、納期)に関連する顧客所有物を明確にし、管理するとよいでしょう。