超ISO企業研究会

これまでの活動

Home *TQM9000発展への解説ポイント
  25.製品の監視・測定のポイント
発展表  製品の監視及び測定へ


ISO9001:2000年版の「製品の監視・測定」は、94年版の「検査・試験」の要求項目から「受入検査」が切り離され、細かな要求内容が姿を消しましたが、基本的な要求内容はそれほど変わっていないといえるでしょう。2000年版で要求しているのは、次の事項です。

【1】 製品要求事項が満足されていることを検証するために製品特性を監視・測定(検査)する
【2】 合否を判定した「記録」を維持する
【3】 計画されたすべての活動が完了するまでは出荷してはならない

これは、検査の判定基準をきちんと決め、そのとおりに検査することによって品質保証を達成しようということで、検査基準すなわち「計画」に間違いがないということが前提となっています。しかし、TQMの観点からいうと、この「計画」の作り方こそ重要であり、加えて「実施」の結果得られた情報を生かすことが重要なのです。


(1) 監視・測定及び監視機器・測定機器を明確化し,重点管理する

1)顧客の要求事項を正しく把握して、適切な検査項目を決める

「計画」が適切でなければいくら「実行」がうまくいってもその効果は十分なものとはなりません。検査においてもその検査項目が、顧客の要求事項を反映していなかったらいくらやっても気休めに過ぎません。それだけでなく、せっかくの努力の結果がむだになってしまうこともあります。

ある部品メーカーが、外観の小さなきずをこれまでと同じように厳しい検査をしていたところが、その製品は実際は、ケースの中に入ってしまい見えないところで使われていたためにさほど厳しい品質を要求しておらずに、多大なむだを発生させていた例もあります。供給する製品の使用目的や使用方法を十分に理解しておくことがいかに重要かということです。顧客がその仕様を提示してきた場合でも、それを鵜呑みにせず、顧客とのコミュニケーションを十分にとり、検査項目を適切にきめることは、ぜひ必要なことです。

不特定の顧客を対象とした自社開発型の企業などの場合は、お客様ははっきりと検査項目を明示してくれません。この場合は、企業自らが決めなければなりません。そのためには、顧客の要求事項を品質特性(値)に変換することがまず必要です。TQMではこれを行うための方法として「品質展開」という手法があります。この手法を使うかどうかは別としても、このような考え方でまずは、検査項目となるべき「品質特性」を明確にする必要があります。


付図25-1 「要求品質→品質特性」変換の考え方



2)効率的な検査方法を設計する

下請企業でよく見うけられるのが、発注企業の受入検査規格や提示された仕様をそのまま、自社の最終検査に使用して検査を実施している方法です。間違いのない方法ですが、これは必ずしも効率的ではありません。なぜかというと、最終検査で不合格が発生すると、そのロスが大変に大きくなってしまうからです。どの段階でどんな検査をするかという問題は大事なことです。

また、検査規格に載っている検査項目を全部やりきれずに、その一部をカットしていることもあります。必要のない検査は当然やることはないのですが、製造工程の作業方法や管理方法をにらみあわせ、合理的に設計したいものです。そのためには、要求されている事項は、部材の調達から始まって、製造の各工程を経て出荷までのプロセス全体を見通して、検査をすることが本当に必要かということも含めて、最も効果的な検査方法を設計するとよいでしょう。

これを行うためには、例示するような表を使って、顧客から提示された要求仕様を、

[1] 設計で保証されている
[2] 製造工程中で保証する
[3] 部品や原材料の検査で保証する
[4] 工程内の検査で保証する
[5] 最終検査で保証する

というように、付図25-2のような表を利用して、層別してから検査方法を決めるようにするとよいでしょう。


付図25-2 要求仕様(品質特性)の層別方法



3)効率的な検査方法を設計する

どこでどんな品質特性を検査するのかを決めると同時に、検査の方法もどんなものにすると最も効果的なのかを考えて一番良い方法を決める必要があります。検査の方法には、大きくは次の3つがあります。これらの方法を効果的に組み合わせると良いでしょう。

検査方法の種類 特  徴
[1]全数検査 膨大な作業量を要するために極力避けたい方法ですが、非常に重要な特性で一品たりとも混入を許さないような場合はこれを採用します。自動試験機などによりこれを効率的に行う工夫も必要です。
[2]抜き取り検査 最も一般的な方法ですが、大別すると計数検査と計量検査があります。計量値で検査できるものはこれを採用すると少ないサンプルで多くの情報を得ることができるのでこれを効果的に使うことです。また、いずれの場合でも、以下の事項についての十分な検討が必要です。
  • サンプリング方法:ランダム、層別、系統、集落、2段などのサンプリング方法があります。検査ロットを明確にしておくこと。
  • 品質水準:顧客と生産者の合意が基本です。
  • 抜取検査方式:抜取数と合否判定基準を明確にします。
[3]無試験検査 製品の品質情報や技術情報に基づいて、サンプルの試験をせずに合否の判定をする方法
[4]間接検査 受入検査で供給側のロットごとの検査成績を必要に応じて確認することにより受入側の試験を省略して合否を判定する方法

ここで、「全数検査」は「抜取り検査」に、「抜取り検査」は「無試験検査」や「間接検査」に移行することを目標にして日々改善にとり組んでいくことが大事です。


(2) 検査の情報を活用する
もうひとつ重要なことが、検査の情報を前工程にフィードバックするということです。検査とは、「試験(測定)をして、その結果をあらかじめ定めた基準と比較して合否の判定を下すこと」です。しかし、同じ検査をするならば、ただ合否の判定という一回きりの業務でなく、その結果が企業にとって何倍も役に立つようにしなければ、もったいないことです。まずは、重要工程についての情報を、以下のように収集・分析してその工程に提供することから始めるとよいでしょう。

[1] ヒストグラムや管理図で工程能力を把握する
[2] 折れ線グラフや管理図(グラフ)で時系列的な傾向を探る
[3] 層別ヒストグラムや、層別散布図などで、機械別、業者別、
型別などのちがいを探る