超ISO企業研究会

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Home *TQM9000発展への解説ポイント
  16.購買管理のポイント
発展表  購買へ
ISO9001:2000(以下規格)の7.4「購買」では、次のことを要求しています
【1】 購買要求事項に購買製品が適合する適切な購買プロセスを確立、実施、維持すること。
(注:確立、実施、維持は7.4.1には規定されていませんが、4.1にQMSの一般要求事項として要求されている。
【2】 供給者を評価し関連する記録を残すこと。
【3】 購買(要求)情報を明確にし、伝達する前に妥当性を確認すること。
【4】 検査等、検証活動を定め実施すること。
【5】 供給先で検証を実施する場合は、検証、リリースの方法を購買情報で明確にすること。

94年版との大きな違いは、手順の文書化要求がないことです。しかし購買製品は原材料や部品など、製品実現工程の上流に位置するだけに、万一不適合が見逃された場合の影響は大きく、必要な範囲で文書化する必要があります。


(1) 供給者との互恵関係を重視する
2000年版の特徴の一つである「品質マネジメントの8原則」に『供給者との互恵関係』がありますが、ほかの7つの原則に比べて、この互恵関係は規格条文には明示されていないようです。しかし、これは高い品質の購買品を継続して入手するための基本原則であり、組織として購買管理の基本的な原則として、考慮すべきことです。

このためには供給者からみて、信頼される購買者であることですが、具体的には、次のようなことを適宜実行すべきです。
[1] 共存共栄の立場の原則を基本的なスタンスとして維持すること。
[2] 購買者が果たすべき/果たせる役割を確実に遵守すること。例えば、
規格7.4.2の購買情報の適切な品質(購買要求事項、特に重点事項の明確化)維持、タイムリーな伝達
必要に応じ技術的な助言、支援、教育など(特に使用者の立場から知り得る知識を活用して)
購買品の重要品質情報のモニター、不適合の未然予防につながる情報の提供
不適合発生時の適切な対応として、真の原因追究の支援


(2) 購買プロセス-1:重点管理を行う
規格でも、管理の方式と程度は購買製品により変えることが規定されています。また、手順の文書化も要求事項に有りません。要は重点管理することです。このため、多数の購買品を、品質の及ぼす影響の強さに応じてシステムを組めば良いことになります。具体的には、購買品の品質への重要度と、管理のレベルを2元表にしていくつかのカテゴリーに分ける。
例:Aランク: 受け入れ検査の実施+定期的な品質監査
Bランク: 受け入れ検査の実施+品質記録の確認
Cランク: 受け入れ時に成績書のみ確認
Dランク: Dランク:受け入れ時の外観のみ確認



図:供給者の評価図の例




(3) 購買プロセス-2:有効な選定評価を行う
供給者を評価選定するに際して、それを有効にするいくつかのポイントがあります。

[1] 評価項目を明確に:Qだけでなく、C、Dまでチェックすること。
[2] データに基づいて:できる限りデータ解析結果を判断の材料に利用すること。
ここは組織の持つ解析力の発揮どころです;サンプリングは?、測定誤差は?、分布形/時系列的な傾向は?、工程能力は?など。
[3] 現場を良く観察して:これも眼力の問われるところです。標準化の程度と質は?、QC工程表はしっかりできているか?、標準の遵守状況は?、表面的な活動になっていないかをしっかり見抜くこと。このためには、まず自社の組織内を見て、検出力を高めるよいでしょう。
[4] マネジメントシステムも:こちらからの要求事項が適切に周知されているか?、不適合管理は確実に行われているか?、過去の不適合経験は伝承されているか?、是正/予防は「真の原因」を追究しているか?。

これらを購買品の重要度に応じて、組合せて評価していくと良いでしょう。
この考え方は、8.2.2の内部監査の考え方に近いものです。また、品質マネジメントの8原則でいえば、意思決定における事実に基づくアプローチの『事実』の質を高めたものといえます。


(4) 質の高い購買情報を発信する
購買情報:購入仕様書類の作成、発行にあたっては次の原則が大切です。

[1] 不適合の発生を未然に防ぐことを念頭において作成すること、このためには、作成、承認にあたって予防の考え方をとり入れること。必要十分な情報は入っているか?、供給者が間違えやすい情報/あいまいな表現になっていないか?、過去のどんなトラブルがあったか/その経験は生かされているか?、など。
[2] タイムリーに発行すること、供給者に必要なリードタイムを考慮すること。時に緊急に依頼することはやむを得ませんが、それを定常化させないことが必要です。


(5) 質の高い検証を行う
検査、検証についてPDCAをまわすこと。そのための解析が必要です。
すなわち、

[1] 購買品の品質レベルをデータに基づいて把握すること。そこから供給者の工程の工程能力、安定状態を確認し必要な処置をとる。さらに、(4)で設定した購入仕様の適切性を判定すること。結果次第では、検査条件の緩和など、コストダウンにつなげることができます。
[2] 供給者にフィードバックすること。特に、不適合の潜在的な兆候がでたときにこれを早期に知らせることが大切です。このような活動は、不適合の未然防止のほかに、供給者に良い意味の緊張感を与え、一体感を作っていくことにつながります。