本日から、品質部門配属になりました 第43回 『クレーム処理,重要品質問題対応』(その3) (2021-03-22)
2021.03.22
今まで2回にわたり,「クレーム処理、重要品質問題への対応」の手順の概要を説明しましたが,今回の第3回は,それらの活動において品質部門が果たす役割を解説します。
5.クレーム処理、重要品質問題への対応における品質部門の役割
「クレーム処理、重要品質問題への対応」に関する品質部門の役割としては、以下のように整理して考えるのが良いでしょう。
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1.ライン機能(主担当業務)
・クレーム処理:窓口、進捗管理
2.事務局・推進・調整・支援機能
1)クレーム対応部署の特定、クレーム解析・対応の進捗管理、対応チーム統括、担当部門支援
2)重要品質問題の特定、進捗管理、対応チーム統括、担当部門支援
3)部門間にわたる品質問題に関わる調整、解決支援・調整
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上記の内容を以下に解説します。
5.1 ライン機能(主担当業務)
・クレーム処理:窓口、進捗管理
これは、品質部門の基本的な役割と言えるもので、顧客から直接又は販売・営業部
門等を通じて入手したクレーム情報に関する窓口となり、その応急処置→原因究明→再発防止策の実施の進捗管理を含め、品質部門が一元的・主体的に実施することになります。
顧客からのクレームをどんな些細なものであっても漏らさず集められるようにしておき、さらには、その情報を必要とする部署へ素早く伝達できるような社内情報体制を明確にするのも品質部門の役割です。
クレームの受付・判定を、小売店、サービス店、問屋などの代行店に依頼(委託)する場合には、特にその判定基準と、現象等の正確な把握・記録の方法を明確にする必要があります。
その意味で、品質部門は,クレーム情報収集方法のマニュアル化や教育を行い,関連部署を含む社内に徹底しておくことが必要です。
この「クレーム処理:窓口、進捗管理」で行う手順は、前々回の「その1」で説明した「1.クレームに対する応急処置」に含まれており、特に品質部門が主担当となる場合が多いでしょう。
これらの一連の手順は、様々なケースがあり、それに迅速、確実に対応する必要があります。筆者が,あるメーカーの品質部門の責任者を務めていた時には,このような様々なケースに迅速に対応するために,(新QC七つ道具の一つの)「PDPC法」による「クレーム応急処置手順」を作って対応していました。
なお,PDPCとは,Process Decision Program Chartの略であり,過程決定計画図と呼ばれており,研究や技術開発、クレーム等の不良対応,営業活動等,状況が流動的で情報が不足していく場面における問題解決でよく使われています.
5.2 事務局・推進・調整・支援機能
1)クレーム対応部署の特定、クレーム解析・対応の進捗管理、対応チーム統括、担当部門支援
「クレーム処理」の一環ではありますが、クレーム解析を含めた「クレーム対応部署の特定」が必要になります。
これは、クレーム内容によって、対応部署として、品質部門以外の、営業、発送・運搬、開発、製造等の方がふさわしい場合があり、その特定を行います。それも1部署だけでなく複数部署でチームを編成する場合もあります。
このような場合の、クレーム解析・対応の進捗管理、対応チーム統括、担当部門支援も品質部門の役割となります。
2)重要品質問題の特定、進捗管理、対応チーム統括、担当部門支援
「重要品質問題」への登録については、前回⑦の手順として解説しました。その特定(指定)は、品質部門があたりますが、次の①~⑦のような状況と場面において,全社的な観点から重要(重大)である場合を想定しておくとよいでしょう。
①設計・開発段階での品質トラブル
②新製品の初期流動段階での品質問題
③部品,材料供給元での品質トラブル
④製造部門における品質トラブル
⑤消費者の使用・安全に影響を与えるクレーム
⑥その他社会的インパクトの大きいクレーム
⑦問題解決に部門間の連携,全社的対応が必要な品質問題
重要品質問題に関する関係部門の指名とタスクチーム編成は品質部門の役割ですが、その進捗管理や対応チームの総括も果たさねばなりません。
その際,ISO 9001:2015の「6.2.2(品質目標の達成計画の決定事項)」 で要求されている以下のa)~e)の5項目について, 明確にしておくことが望ましいでしょう。
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a) 実施事項:解析方法、実施スケジュール
b) 必要な資源:人的な能力と時間、使用する設備・機器
c) 責任者:チームの責任者
d) 実施事項の完了時期:完了すべき納期
e) 結果の評価方法:最終結果をどのように判断するか
品質部門は,この重要品質問題については,問題の解析,対策の立案,解決策の実施,再発の防止などの推進の主役を担いますが、担当部門が不十分であれば、そこへの支援策も
講じなければなりません。
3)部門間にわたる品質問題に関わる調整、解決支援・調整
「重要品質問題」とならなくても、部門間にわたる品質問題は多く発生します。
ある組織が生み出す製品サービスの品質は、社内外のあらゆる部門の作用・要因の結集したものであり、品質問題は部門間にわたることが一般的です。
そして,部門間にわたる品質問題については、組織内の各部門や社外関係部門の協力・連携が欠かせません。その調整役も品質部門の役割となります。
このような意味で、部門間にわたる品質問題を効果的・効率的に確実に進めるには,やり方(手順・仕組み)の「見える化」「共有化」が必要であり,フローチャート等を使った「品質保証体系図」や「クレーム処理の業務フロー(手順書)」等のの作成→周知→遵守が望まれます。
6.まとめ(クレーム処理と品質部門の役割)
以上,3回にわたり,「クレーム処理,重要品質問題対応」の進め方(手順)と品質部門の役割を詳しく解説しました。
それらは、ISO 9001(JIS Q 9001)の「10.2 不適合及び是正処置」の要求事項と関連しています。
その「10.2.1」の要求事項の末尾には「是正処置は,検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければならない。」と書かれています。これは、全ての不適合について、一律の是正処置を行う必要はなく、影響度(重要度)に応じて対応することを求めています。
2回にわたり示した①~⑱の手順も、一律に全て行う必要はなく、重点指向するのは当然です。
クレーム処理で最も重要なことは、そのクレームに対する迅速、正確、誠実な処理です。それと同時に、1件のクレームから、自社の固有技術や品質保証システムの不備にまで、多くのことを「失敗に学ぶ」こと、そして改善に結びつけることです。
このクレーム処理で、その窓口や進捗管理をはじめ、関係部門の調整、支援等において中核的役割を果たすのが、品質部門です。
完(松本 隆)