本日から、品質部門配属になりました 第41回 『クレーム処理,重要品質問題対応』(その1) (2021-03-08)
2021.03.08
今回から3回にわたり“本日から,品質部門配属になりました”の
『13.クレーム処理,重要品質問題対応』を配信します。
0.1 はじめに
品質部門に大きな責任がある「品質保証活動の要素」については,
以下の(1)~(2)のように,2つに分けて考えることができます。
(1)“はじめから”品質の良い製品・サービスを生み出せるようにすること
①手順を確立する(顧客満足が得られる品質達成の手順の確立)
②手順が妥当であることを確認する(手順通りの実施で顧客満足の品質達成かの確認)
③手順通りに実行する(手順通りの実施,実施されてない場合のフィードバック)
④製品・サービスを確認する(製品・サービスの品質水準の確認,未達の場合の処理)
(2)“もし不具合があったら”,適切な処置をとること
①応急対策(クレーム処理,アフターサービス,製造物責任補償)を実施する
②再発防止策(品質解析,前工程へのフィードバック)を実施する
上記(2)の「“もし不具合があったら”,適切な処置をとること」の具体的な処置として「クレーム処理,重要品質問題対応」があり,これには,品質部門の役割が極めて大きいと言えるでしょう。
0.2 「クレーム」と「クレーム処理」の意味
「品物やサービスの欠陥などに関して,消費者や製造者が供給者に対してもつ不満」のことを「苦情」といいます。苦情のうちで,とくに修理,取替え,値引き,解約,損害賠償などの請求があり,供給者がクレームと判定したものを「クレーム」といいます。
従って,「苦情」の方が,「クレーム」より幅が広い概念で,「クレーム」は,「苦情」の一部と考えるのが一般的です。
また,「苦情」は,実質的要求を伴わない不平・不満,「クレーム」は実質的要求を伴
う不平・不満,という区分けで,両者を識別することもあります。
クレーム情報は,製品・サービスの供給者である企業にとって,以下の①~④に示す点で重要な意味を持っています。
①使用者の不満を解消し,信頼を維持する為の応急処置の出発点になる
②同様のクレームが生じないように予防することができる
③保有する技術の不足や,お客様の要望を知ることができる
④品質システムの不備を知ることができる
このような意味で重要なお客様からのクレーム情報を集め分析することは,失敗に学ぶことであり,改善の絶好のチャンスとすることができます。まずは品質部門が,この考え方を社内に浸透させることが欠かせません。
0.3 クレーム処理の一般的な手順(概要)
クレーム処理の一般的な手順(概要)を以下の1.~4.に示します。
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1. クレームに対する応急処置
①苦情の受付
②現品調査または実地調査
③クレーム判定
④クレーム品に対する修理・取替えなどの処置
⑤クレーム処理報告書の発行
2. クレームの解析(原因究明)
⑥現象の的確な把握
⑦重要品質問題への登録
⑧解析担当部門の決定
⑨解析担当部門による現品調査または実地調査
⑩不具合原因の究明
⑪品質保証システムの不備の解析
3. 再発防止策
⑫対策案(方法,範囲)の立案
⑬クレーム品と同一の製品に対する処置
⑭他の製品に対する処置
⑮設計・製造・評価他のプロセスに対する処置
⑯品質保証システムの改善
4. クレーム情報の活用
⑰クレーム処理報告書の作成
⑱クレーム情報の分析と活用
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この①~⑱の手順は,主に製造業をベースに考えていますが、
生産と使用(消費)が同時に行われることが多いサービス業の場合も,解析・処置のスピード感等は異なりますが,基本的な進め方は同様であるといえるでしょう。
上記の1.~4.と,それを細かに分解した①~⑱の手順の詳細及び品質部門の役割について,以下詳しく解説します。
1.クレームに対する応急処置
クレーム処理において,まず苦情を表明した顧客に対する処置が必要です。
この活動は顧客の不満を解消し,信頼を維持するためのものですから,迅速,確実,誠実に行なう必要があります。この活動によって顧客の怒りが鎮まるばかりでなく,逆に信頼をかち取ることさえできることがあります。
また,貴重なクレーム情報を真に活かすためのポイントは「原因の究明」にあります。これを確実に実行するためには,初期段階でできる限り詳細な情報を入手しておくことであり,品質部門は,そのための情報収集方法のマニュアル化や教育を行い,社内に徹底しておくことが必要です。
以上を踏まえて,以下の①~⑤の手順を確実に実施することが求められます。
①苦情の受付
お客様からのクレームの受付は,種々の窓口で行われることがありますが,それを集める主管部門を決めておき,迅速にその情報を集約する。
②現品調査または実地調査
できるだけ,現品を入手するか,現地で確認するといった,三現(現場・現物・現実)主義が肝心である。
③クレーム判定
苦情が修理・取替えなど具体的請求をともなう場合,その苦情をクレームとして処理するかどうか判定する。クレーム判定は,製造側において,カタログ・品質保証書などに記載されている事項を基準として行なう。
クレーム判定を小売店,サービス店等に依頼する場合は,判定基準の明確化(標準化)が必須です。
④クレーム品に対する修理・取替えなどの処置
クレームと判定された苦情については,修理,取替え,部品交換を無料で行ったり,値引き,解約,損害賠償などを行なう。
⑤クレーム処理報告書の発行
クレームとして処理した苦情については,クレーム発生状況とその処理内容をクレーム処理報告書に記録する。この報告書は,クレーム判定およびクレーム品への対策を実施した部門で作成し,クレーム主管部門へ送付する。クレーム処理報告書は,引き続きなされるこのクレームに関する処理内容の記録のためにも利用される。クレーム処理報告書に記載すべき内容については,次回の⑰で解説します。
以上で,クレーム処理の手順の「1.クレームに対する応急処置」の①~⑤までの解説が終わりました。
⑥~⑱については,次回第2回に回します。
【引用文献】飯塚悦功(2009):現代品質管理総論,朝倉書店
(松本 隆)