本日から、品質部門配属になりました 第27回 『量産品質の保証:量産プロセス管理』(その1) (2020-11-23)
2020.11.23
1.はじめに
経営層から、「工程設計・生産準備」を中心とした品質保証体制の見直しを命じられた中山さんは、これを1年間実施した結果、その成果がだいぶ上がりました。
しかしながら、不良発生が以前よりは減少はしたものの、相変わらず生産部門責任の品質クレームは発生しています。中山さんは、次は、「量産プロセス管理」の品質保証体制の見直しが必要と判断し、これに着手しました。
中山さんは、前に生産技術部門の役割を最初に明確にし、それを支援するのが品質保証部門の仕事だと考えたのと同じように、生産部門の役割をまず考え、そこから生産部門の品質保証ポイントを挙げてみました。
2.生産部門の品質保証ポイント
そもそも生産部門は、作業標準書に定められた方法を忠実に守って作業を実施することが第一です。そのためには、正しい作業方法をしっかりと理解し、これができるように、教育訓練を実施することが、まずは基本です。
しかしながら、いくら標準通りに作業をしても、4M(Man人、Machine設備、Method方法、Material材料)と1E(Environment作業環境)は、いつも一定ではありません。これが変動したときには品質特性もばらつき、ときには規格を超えて不良品となります。したがって、これらを意識して「維持」するような努力をしなければなりません。
また、工程の状態が通常以上にばらついた時を的確にとらえて、これが悪く影響する前に、素早く対応をとらなければなりません。
設計・開発部門では、製品設計や工程設計を行いますが、無限の時間の中でやっているわけでもありませんし、その知識や技術も完璧ではありません。予測できなかった思いがけない要因が潜んでいたり、予測以上のばらつきが発生したりすることもあります。製造段階では、不断の「改善」を実施する必要もあります。その改善は、上記のばらつきが通常よりも大きく変動したときも、その機会となります。
一方、作業者側でも、いくら作業標準通りにやっても、ときには「誤り(エラー)」が発生します。人間がやることなので、このエラー(すなわちヒューマンエラー)は、必ず発生することを前提として、これが発生しないような対策が必要です。
そしてもうひとつが「検査」です。上記のことがらを遂行するためには、製品や仕掛品の特性を監視、あるいは測定することが必ずつきものであり、この結果は、その後の行動を左右する重要な作業です。
このように考えた中山さんは、これらをひとつずつ見直していくことにしました。以下に、上記の順番で、その内容を説明します。
3.作業標準書と教育・訓練
作業標準書には、大きくは「一般作業標準」と「個別作業標準」があることは、前回のメルマガで説明しました。生産部門では、穴明加工とか、溶接とか、接着とか、半田付けとか、製造する製品が変わっても,共通的に行われる作業に関する標準、すなわち、「一般作業標準書」を作ると良いのですが、A社の実態はちがっていました。
A社では、生産技術部の作った作業手順書による教育を受けた後に、さらに詳細な手順の標準化が必要と判断した作業に対して手順書を作っています。また、客先からの品質クレームや工程内で異常が発生した時に打った作業改善も、適宜、作業標準書に反映させ、時には、「ワンポイント手順書」として標準化されたものも結構蓄積されています。そして、これらの対策が風化しないように、定期的に朝礼の場で読み返しを実施しています。
中山さんは、これらのバラバラに散在している知識を、作業要素ごとに作成される「一般的作業標準」に集約して、会社の知識として整理して、確実に活用できるようにしました。
また、生産部門で追加した変更情報が生産技術部門に届いていないために、標準の大元である「QC工程表」や、技術部門で作る作業標準書との不整合が起きています。前述のように生産部門で、朝礼の場で実施している定期的な読み返しも良いが、作るその時に過去の失敗事例が分かればもっと良い、と考えました。そこで、改善した内容をコンピュータシステムに入力しておくことにより、生産技術部門にもその情報が確実に届き、さらには、生産するときの生産指示書にその履歴が分かるというシステムを提案して、これを計画的に進めていくことになりました。
4.工程の維持管理
①工程異常の検出と的確な対応
工程の維持管理のポイントは、「管理状態」を維持することであり、この状態でなくなったとき、すなわち「工程異常」が発生した時を、いち早く発見して、すぐに手を打って、「管理状態」を継続させることです。ここで「管理状態」とは、作業標準で規定した通りの作業を行い,標準によって入り込むことを防ごうとした要因が管理され,存在しても仕方がないと考えていた要因によるばらつき(許容できるばらつき)だけで,工程が変動している状態です.
工程異常を発見する代表的な手法例が「管理図」です。工程の状態を代表するような特性の、通常のばらつきの大きさを基準にして、それが異常であるかどうかを統計的に判断して管理をして行く方法です。古い方法と馬鹿にせず活用することが推奨されます。この考え方は、現場の様々なプロセス管理の基本であり、いかに合理的な管理基準を設定するかと言うことが、維持管理のポイントとなります。
そして、この工程異常が発生したときの処理の手順が明確になっていることも重要です。通常はこの手順が規定などで明確にしてあるのですが、必要な手順がもれなく、確実に実行できるように「工程異常報告書」の様式を作っておいて運用することが効果的です。さらには、この記録の蓄積が、“組織の知識”として活用も出来ます。
中山さんは、製造ラインの現状をみて、「管理図」の活用がまだまだ不十分であると判断しました。そこで、これをもっともっと増やすことと、統計的な処理がしにくいような特性も、できるだけ合理的な基準を決めて、異常を検出することにより、改善の機会を確実にとらえられるようにしました。
「量産品質の保証:量産プロセス管理」の第1回目は、まずは,ここまでです。次回は、「工程の維持管理」(変更管理、変化点管理)の続きと、「工程改善」のお話をします。
(丸山 昇)