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本日から、品質部門配属になりました 第24回 『設計・開発品質の保証:工程設計・生産準備』(その2)   (2020-11-2)

2020.11.02

3. 工程設計(つづき)
 
③使用する「設備や治工具」を決める

使用する設備や治工具は、生産技術部門で決めます。同じ設備であっても、その機種や大きさ、メーカーなど、製品に最適なものを選択するためには、それを使用する製造の情報や意見も重要です。サイマルテニアス・エンジニアリングの活かしどころでもあります。

また、特に治工具は、製造の生産性や製品の品質確保のために、自社のノウハウがぎっしりと詰まっていることが多いものです。A社も他聞に漏れず、この治具に依ることが大きいのですが、なかなか陽に当たることが少ないので、ついおろそかになりがちです。

良い治具が開発されるには、最新の技術情報が入手できることや、この情報やこれまでに当社で蓄積された知識を活用できるようにすることが大事で、中山さんは、このあたりは、品質保証部の役割のひとつだと思いました。

それともうひとつ大事なことが、設備や治工具の管理方法の決定です。設備が本来的に達成しなければならないこととしては、機能/性能,操作性,信頼性,保全性,環境性,人間性,操業コスト,設置性などがあります。中山さんも、技術部門にいたときに行っていたのは、これらのことを総合的に考えながら、業者の提供する取扱説明書を参考にしながら、そのための点検項目や点検方法・基準を決めていました。

しかしながら、今、品質部門として考えてみると、⑤で後述するように、当該設備を使用する工程の重要な要因をばらつかせることに関連する事項は、不可欠な点検項目としておかなければいけないと改めて思いました。

また、設備が故障したり、不調なときには、その品質に対する影響も多大です。したがって、新規性の高い設備が導入されたり、大規模な改造が行われたりしたときには、しっかりと工程FMEAをやっておく必要もあります。
 
④製造工程全体を適切な区切り(まとまり)で細分化し工程名を付ける

そうやって、作業とその順序と、これに使用する設備・機器が決まると、次は、これらの管理を効果的に実施するために、管理のしやすい作業のまとまりで区切りを決めて、それぞれの工程の名称を決めます。中山さんは、この部分については、長年の経験の中でほぼ決まっており、この決め方に大きな問題点はないと判断しました。
 
⑤それぞれの工程の「管理項目と方法」を決める

次に、それぞれの工程の管理項目と管理方法の決定です。「1.はじめに」の中で述べたように、A社は、最初のある時期には「品質特性」を明確にして、これをこまめにチェックして、バラツキのない製品を作り込むことで成果を挙げました。例えば、「プレス」の工程では、作業者本人が、一作業ごとにその外観を確認し、一定のショットを終えるごとに、その寸法を測り、1ロットの最後の製品で、規格の全項目を確認して、次の工程に渡す、そんなしくみを定着させました。

しかし、それでは十分でなく、それぞれの工程で品質をばらつかせる「要因(条件)」を明確にして、これをコントロールすることでさらに成果を上げていきました。「工程で品質を作り込む」ことの肝は、まさにここだったのです。

そんな眼で、中山さんは現状を「はたして、特性と要因の関係をつかみきって製造に渡しているだろうか?」と考えてみました。いわゆる「工程解析」は十分にやられているのだろうか、もっと効率的にやる方法があるのではないか、このあたりに重点的に手を打っていこうと考えました。このことは、改めて、次の「3.工程解析」で説明します。
 
⑥検査の必要性を検討し、「検査」のタイミングと方法を決める

工程で品質を作り込むことによって「検査」のやり方も変わってくるはずです。理想は、工程で品質を作り込むことによって検査をしないことですが、そんな簡単に済む話ではありません。しかしながら、重複するようなムダな検査は合理化の余地があります。

A社の検査は、大きく分けて、受入検査、工程内検査、完成品検査、出荷検査がありますが、これらについては、主に、中山さんの品質保証部で担当しています。受入検査の内、外注品については図面に基づく検査を実施し、その他の製品については、外部業者の試験成績表や、検査結果表を提出してもらってこれで合否を判定しています。完成品検査は、基本的には製品規格のすべての項目が規格に適合しているかを、サンプリングして検査を実施しています。最終検査では、製造・検査に必要なすべての作業が正しく行われていることを記録で確認をして、品質保証部で出荷の許可を出します。

ここで重要になってくるのは、工程内検査です。ここでしっかりとできていれば、後の検査が楽です。しかしながら、時間が掛かったり、難しかったり、監視・測定機器が特殊であったりする場合は、製造では「効率」を考慮して、やらなかったり、簡易的な方法でやるように計画することが往々にしてあります。中山さんは、これが適切に行われているかどうかを、計画的に「QC工程表」(後述)を見直してみることにしました。

それと、A社において最近積極的に導入されているのが、IoTやAIを利用した機器、特に画像処理データを利用した自動検査装置です。この装置の精度は、日増しに高まってはいるものの、人間の目視による検査に完全に替わるものとしての信頼性には、今一歩という感じです。この検出精度の点検はむろんのこと、顧客から要求される品質とのギャップを把握して、これをきめ細かく調整するしくみを明確にして、運用するようにしました。ここは、品質保証部が出て行かないと進まないところでもあります。
 
⑦製造や検査を実施する「作業環境」を検討して決める

A社の製品には、医療用機器の製造工場で使用される装置や、医療の現場で使用される機器の一部を製造しています。このような機器は、他の製品よりも、汚れの付着や異物の混入などに配慮しなければなりません。また、一部の電子製品(仕掛品も含む)には、保管中に静電気の防止対策を講じておく必要もあります。

このようなことを当然考えて「作業環境」を設定するのですが、製造部門や生産技術部門から考えると、どうしても生産性を優先して「動線」を中心に見てしまいがちなので、ここは品質保証部としての視点で、従来ラインの環境から隔離することなどが必要な場合は、それを強く主張しなければなりません。

検査の環境も同じです。精密な寸法を測るときは、振動を与えるプレスなどのラインから離すとか、冬の寒い時期は朝と昼では測定値が数ミクロン変わってきてしまうので、そのための環境や、これが確保できないときの処置も考えておく必要があります。
 
⑧製造方法や、検査方法の詳細な手順や基準を決める

最後が、製造や検査の詳細な手順・基準を決めて、この情報がラインで確実に参照できて、実行できるようにすることです。

基本は、生産技術部門が作成するのですが、企業によっていろいろあります。A社では、作業標準書は基本的には生産技術部門で作成し、さらに詳細な手順については、生産部門がその必要に応じて作成しています。

また、判定基準を含む検査標準書は、設計部門がアウトプットした「製品規格」を基にして、品質保証部門が作成をしています。しかしながら、品質の高い製品を提供するのには、固有技術が必須であって、その中には「評価技術」も含まれます。最新のテクノロジーを駆使した評価方法を検査方法に反映させることが重要であり、そのためには、もっともっと生産技術部門の知識を活用する必要があるはずです。そこで、中山さんは、新しい検査方法の開拓を生産技術部と品質保証部とで、共同で開発していけるような場を設定することにしました。

 

    ●工程設計段階での品質部門の役割発揮ポイント(1)

中山さんのこれまでの仕事ぶりから、ここでいったん、工程設計段階での、品質部門として果たす役割のポイントを整理しておきましょう。当メルマガ第4回、及び、第9回で説明している、“性格が異なる4つの役割”に分けて説明します。

①体系構築・管轄

「新たなしくみを作るとか、既存のしくみの運用状況を監視し、改善・強化する」対象として、以下の事項を特に留意します。

・工程FMEAなど予防処置の実施(4M変更時や新規設備導入時が確実に実施できる)

・生産技術や評価技術に関する「組織の知識」の収集及び活用

・設備点検基準の設定(品質特性との関係を考慮する)

・設計レビューでの積極的な提案(品質保証の立場から強く主張する)

②主担当ライン業務

「品質部門の仕事として積極的に実施する」対象として、以下の事項を特に留意します。

・品質評価方法や検査方法を改善する

・顧客とコミュニケーションをよく取って適切な規格を設定する

・顧客との品質水準のギャップのあるものは調整する

③事務局的ライン業務

「正式な『事務局』として機能したり、情報提供をしたり、そのための『機会』を設定したり、日常の業務の中で働きかける」対象として、以下の事項を特に留意します。

・品質評価技術の最新情報入手及び活用の「場」を設定する

④経営参謀的業務

これは、最後にまとめます。

 

「工程設計」のお話は、ここまでです。次回、「設計・開発の品質保証:工程設計・生産準備」の第3回目は「工程解析」の話に入ります。
 
(丸山 昇)

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