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本日から、品質部門配属になりました 第21回 『設計・開発品質の保証:設計・開発の全貌と製品設計』(その3)   (2020-10-12)

2020.10.12

【第3回】“設計・開発の評価(妥当性確認)の目的、方法について

 

今回は、“設計・開発の結果の評価(妥当性確認)” の目的、方法に関して考察します。

 

■設計・開発内容の評価(妥当性の確認)の目的、方法

設計・開発においては、もちろん、品質要求にしたがった技術的仕様を決めているわけですが、途中の適切な段階で、それが本当に実現出来ているかどうか、すなわち“製品の実際の使用状態においてその機能や性能が発揮されるように設計・開発されているかを客観的な裏付けにより評価することが必要となります。

この妥当性確認・評価には2つの側面があります、第一は、特定した技術的仕様が要求・ニーズを満たす結果が得られているかという目的達成面からの評価であり、また、忘れてはならない第二としては、特定した仕様によって、また、その実現手段固有の性質により、好ましくない影響が他に生じていないことを評価する側面です。前述したFMEAは、まさにこの評価のための手法とも言えます。

次に、設計・開発の妥当性評価の方法ですが、大きく3つに分けられます。1つ目は、理論や経験に基づく机上検討・評価(デザインレビュー,設計審査など)やFMEA(Failure Mode and Effect Analysis,故障モードと影響解析)が代表的な方法です。2つ目は、試作品に代表される設計仕様通りの実物や疑似代用品による評価です。3つ目は、いわば実物を作ることなく試作を計算機のなかで行うCAE(Computer Aided Engineering)やシミュレーション手法などを使った評価です。

 

 (参考) ISO9000:2015_3.8.13 妥当性確認(validation)

  「客観的証拠(3.8.3)を提示することによって、特定の意図された用途又は適用に関する要求事項が満
  たされていることを確認すること。

  注記1 妥当性確認のために必要な客観的証拠は、試験の結果、又は別法による計算の実施若しくは文書の
  レビューのような他の形の確定の結果である。

  注記3 妥当性確認のための使用条件は、実環境の場合も、模擬の場合もある。」

 

以下では、この妥当性確認;評価の実施に際して、代表的なデザインレビューと試作品による方法を例にとって着眼すべき配慮点、注意点を挙げてみます。

このような、設計・開発プロセスにおける各評価機能は、言わば各アウトプットに対するゲート機能であり、“要求性能・仕様を満たしたアウトプットとなっているか、更に決められたプロセスが確実に順守されているか”の2つの側面から、品質部門がいかに有効に参画するかがキーとなります。

>デザインレビュー(DR):

 ・製品・サービスの特性としては、機能・性能、信頼性、安全性の考慮だけでは十分でなく、使い易さ、
  効率、コスト、生産性、保守性、周囲への影響、デザイン、製品・サービス支援体制、法規などに及
  ぶ製品等の性質、特徴を配慮した全ての要求、期待、ニーズを忘れないこと

 ・設計に起因するクレームの多くのものは、設計時に想定した使用条件と実際の使用条件が異なること
  に起因する例が多く“使われ方”の突っ込んだ検討、それに対するトラブル予測が重要であること

 ・評価参加者は、設計・開発部門に留まらず、全組織的な多面的な知識の効果的な利用が必要であり、
  有効性のためには各分野から専門的知識を持った人々の参加が必須である

 ・特に構想設計段階から生産技術部門や製造部門がDRに参画することにより、新製品に内在する下流
  (製造、試験、保守など)の課題を早期に抽出し早期の対応に備えることが可能となる

 ・設計・開発プロセスが定められた標準、手順書に基づき適切に運用されているかのプロセス管理面の
  重要性も忘れないこと;各種漏れている点が無いか、過去に指摘された未解決の課題への対処・解決
  は十分か

 ・効果的なDR実施のための実施手順等の整備(必要参加要員、製品・サービスの種類・工程毎のDR
  チェックシート、準備すべき提示資料の明確化など)

>試作品:

 ・試作物の目的、対象、範囲に加えて評価項目、方法などの観点から、どこに焦点当てるか狙いの
  明確化;モデル、モックアップなど基本機能・基本性能・デザインなど構想設計を固めるための
  もの、製品企画において定められた機能・性能が設計において作り込まれたかどうかを確認する
  ためのもの、更に性能試験、信頼性試験、パイロット・プラントによる試験、社内/外モニター
  による試用評価、製品の耐久寿命試験や過負荷試験などを狙うものなどがある

 ・単に設計図面通りに作るばかりではなく、品質特定に対する達成度および代用特性への変換の妥当
  性の評価が狙いであり、その目的は「試作品のそのものの評価」ではなく、「設計・開発内容の
  評価」であることを忘れないこと

 

以上、設計・開発という品質経営機能を果たす活動の側面、内容などを3回に渡って考察してきました。

 ・設計・開発機能、本質とは、その目的である技術仕様化への展開・変換のアプローチ、手法について

 ・設計・開発の階層的な展開、対象・側面の実務面について

 ・設計・開発内容の評価(妥当性の確認)の目的、方法について

 

今まで考察してきた“設計・開発の機能”の責任・主管部門は、組織体制にもよりますが、多くの場合、製品事業部門となります。しかしながら、品質部門が、今回議論してきた品質保証機能等の側面、内容の本質を十分理解していることが不可欠であり、そうであるか否かで、各種判断を要する問題解決、処理などの場面において、結果が大きく異なることは明らかでしょう。品質部門は、このような品質保証機能、及び各プロセスを製品事業部門と一体となって、ある時は第三者の立場からチェック機能面などから毅然として積極的に参画する体制が求められています。

 

次回、最後の第4回目では設計・開発品質の保証における品質部門の役割・関わりの視点から考察したいと思います。

 

(小原 愼一郎)

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