本日から、品質部門配属になりました 第4回 『品質部門の役割』(その3) (2020-06-08)
2020.06.08
■主管部門としての品質部門の役割
さて次に,先週検討した,品質保証業務の全貌を踏まえて,その主管部門としての品質部門の役割,担当業務について概観してみることにします.
主管部門の業務というものが,どのような種類の業務から成り立っているかについて,これまたいろいろな理解の仕方があるでしょう.少なくとも3種類あると考えて良さそうです.第一は,対象となる経営機能を,全組織を挙げて実施していくための体系の構築とその機能の運営状況の監視・管轄です.第二は,もっぱら自部門が主たる責任・権限をもって実施するライン業務です.第三は,その経営機能のための体系・体制のもとで各部門が分担・連携して実施していく業務についての,部門間の調整や支援です.そして,その3つにもう一つ加えるなら,その経営機能の経営における重要性によっては,経営トップ層の参謀的役割を果たすこともあるでしょう.
すなわち,これら4種類の業務は,それぞれ以下のように整理できます.
①体系構築・管轄
②主担当ライン業務
③事務局的ライン業務
④経営参謀的業務
品質保証機能について言うならば,①の「体系構築・管轄」とは,品質保証の体系・体制を,組織目的達成のために適切なものであり続けるようにするための諸活動で,例えば以下のようなものが考えられます.
・ 品質保証のためのマネジメントの体系・体制の構築・維持・改善
・ ISO 9001認証の戦略的活用
・ 品質保証システムの監査の主導
・ 品質会議の主催
・ 品質機能に関わる改善提案・指示・指揮
・ 品質に関わる各種レビューへの参画
・ 顧客価値提供活動におけるGate管理(例えば,出荷停止権)
これらの業務について,どれほどの責任・権限が付与されるかは組織によって様々ではあり得ますが,組織のいずれかの部門・個人がこれらの機能を担う必要があります.
②の「主担当ライン業務」とは,品質の達成のために必要な業務機能のうち,自らが主担当となって実施する業務で,例えば以下のようなものが考えられます.もちろん,これらの業務は組織の業務分掌により多種多様なものとなるでしょう.
・ 品質部門が主担当となって実施する独立の検査
・ 品質監査の一部の実施
・ 検査・試験・測定機器の管理
③の「事務局的ライン業務」とは,①と②の間に位置づけられるようなもので,様々な部門が主担当となって実施しますが,その全体を取りまとめ,進捗させ,必要に応じて調整・支援するような業務です.大きくは2種類あり,例えば以下のようなものが考えられます.
(品質関連業務の開始,進捗フォロー,終結の管理)
・ 監査に関連する業務
・ ISO 9001認証維持に関わる業務
・ クレーム対応・進捗管理
・ 重要品質問題対応
・ 標準化の推進
(支援・調整)
・ 各部門の品質業務の支援
・ 部門を超えた連携における調整
・ クレーム対応における部門間調整・支援
・ 重要品質問題対応における部門間調整・支援
・ 改善の支援・指導
ここに分類した業務は,①と②の両方の性格を持ち,したがって①や②との相違が明確になりにくいし,組織の業務分掌によって,どちらにも分類しうるでしょう.そんなとき,分類すること自体にはこだわらないでください.性格の異なる業務を担っているという認識と,それらすべてを,組織のいずれかの部門が何らかの形で実施していくことが必要という覚悟が重要です.
④の「経営参謀的業務」とは,品質機能が典型ですが,その経営機能が経営にとって非常に重要であり,ときに経営の根幹に多大な影響を与えることがあるので,経営者や上級管理者に対して,提案・進言・答申する,さらにそのために調査・分析・研究をするという,いわば経営参謀のような役割を期待されている業務です.例えば,以下のようなものが考えられます.
・ 品質のための組織づくり
・ 品質保証体系の運用状況のレビュー
・ 品質保証システムの改善提案
・ 品質経営推進に関わる調査・研究
・ 品質や顧客満足に関わる価値観の変化に応じた組織的対応の提案
■メルマガで取り上げるテーマ
導入部が長くなってしまい申し訳ありませんでしたが,組織が有すべき品質機能の全貌を理解したうえで,品質部門が担うべき業務を明らかにするために,必要な準備だったとご理解いただければ幸いです.
来週から,品質部門が担うべき業務について考察していくことになりますが,どのように記述していくか悩みどころではあります.ここでは,先週検討しました,「品質保証業務」のA~Dの構造にしたがって,組織全体の品質保証業務の概要を説明し,その業務に関わる品質部門が担うべき主管業務について綴っていくという形にいたします.
取り上げるテーマは,以下の18といたします.執筆していくうちに,追加,変更,再構成などの変更をするかもしれません.各テーマについて,超ISO企業研究会メンバが分担をして,それぞれの知見,経験に基づき,見解を語っていくことにいたします.
0.はじめに
1.品質部門の役割(このテーマ)
A.品質保証体制
2.品質保証体系(ISO 9001の戦略的活用を含む)
3.品質情報システム
4.社内への標準化推進
B.4つの品質保証機能
5.企画品質の保証
6.設計・開発品質の保証
7.量産品質の保証(1)-量産プロセス
8.量産品質の保証(2)-調達品質
9.市場品質の保証
C.品質保証の全社的活動
10.品質会議
11.品質評価・監査・診断(製品評価,製品監査,システム監査・診断,内部+外部監査)
12.クレーム処理,重要品質問題対応
13.品質管理教育(品質人材の育成)
14.全社的品質改善活動の推進
D.品質経営参謀,CQOの補佐,右腕
15.品質の経済性検討
16.品質のための方針の管理
17.組織内外への情報発信
18.トップ診断の運営
それでは,来週からのメルマガを引き続きお楽しみください.
(飯塚悦功)