活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第2弾 第13回 青木恒享(その2)
2019.02.18
前回に続き、事務局長の青木です。
今回もよろしくお付き合いください。
前回、是正処置に関して、その活用についてのお話を致しました。
少々研修講師的な立ち位置からの話で皆様にとってお役に立つ部分は少なかったかもしれません。
今回は、管理者視点で、私自身の体験談も含めてお話をさせて頂きたいと思います。
個人的な話で恐縮ですが、私自身の生い立ちを申し上げると、昔ながらの体育会気質の中で学生時代を過ごしました。
社会人になっても上下関係に厳しい部門にいた時期が長かったこともあり、学生だけでなく、社会人になっても年次が1年違えば、上からの指示命令は絶対、というような(ちょっと極端ですが)風土の中でそこそこの年齢になっていきました。
私自身の人間のレベルの低さを物語ることになってしまいますが、上からそのような接し方をされてきたものですから下に対しては・・・・・。
言わずもがなですが、顎で使うような言動をとっていたこともそれなりにあったでしょう(今思えば本当に赤面の至りです)。
当然、1年年次が違えば後輩のことは呼び捨てです。
前の会社を辞めて20年が経ちますが、当時の慣習は恐ろしいもので、先輩にお会いすれば呼び捨てにされますし、後輩に会えば呼び捨てになってしまいます(今の当社(テクノファ)は全員「さん」づけですからどうぞその点は誤解なきようにお願いします)。
そのような組織風土で社会人としての初期を過ごした私にとっては、是正処置の概念はとても新鮮なものでした。そしてそれを学んだ当初は到底その本質の理解などできようもありません(お恥ずかしいことながら、社会人経験10年以上経っていた30代前半の頃の話です)。
何かミスをすれば、「なにやってんだ!」という怒声が飛ぶ時もあった世界から、ミスが起きたら、応急処置だけでは全く不足で、なぜそのミスが起きたか、そのミスを防ぐために本人の自助努力だけでなく、組織の仕組みとして何を強化すればよいかを考える、という視点は全く欠落していたからです。
この理解に何年かかったか、全く覚えていないのですが、当社に転職してしばらくの間は、年下の人がミスをした際に、さすがに「何やっているんだ!」と怒声を浴びせかけるようなことはしないまでも、『まったくこいつは何やってるんだ』という気持ちを心の中で持ちつつ対処していたことがあったような気がします(都合の悪いことはすぐ忘れるたちで、ご容赦ください)。
当社で何年かの経験によって、是正処置の本質が掴めるようになった以降は、そのような言動を取る自分の狭量さがよくわかってきたものでした。
確か当時、役職が上がることによって部下がどんどん増えていく時期と重なったこともあり、より一層その点への認識が進んだのだと思います。
「罪を憎んで人を憎まず」
ということわざがありますが、その意味、価値がようやく私にもわかってきた時期でした。
私の中では「ミスは憎めど人を憎まず」と少々言葉を置き換えて捉えていますが、そのような置き換え対応は皆様の好みでどうぞご自由にして頂ければと思います。
いずれにせよ、ミスをした後輩や部下を叱る叱り方は変わったはずです。
少なくとも、ミスをした直後に瞬間湯沸かし器になって叱りつける、ということは皆無になったはず(?自己評価では)です。
是正処置で理解すべきことは、表面的な応急処置で終わらせてはダメ、ということと、ミスはどのような仕事、組織でも起きるリスクは常に抱えており、それをなくすためにも個人の力量に頼るのではなく、組織として担保する(バックアップする)仕組みが必要である、ということです。
ここまで書いてふと思い出しました。
大学を出て、新入社員としてある仕事をしていた時に上司から掛けられた言葉です。
ある伝票の内容をシステムに入力をしている際に、間違ってはいけない、と何度も確認をしていた時でしたが、上司から
「万が一、ここで君が間違ったとしても、そのあとそのミスが発覚するようなシステム上の担保はされているから、あまり怖がることなく(ザルのチェックでは困るけど)処理を進めて大丈夫だよ」
という感じで声をかけてもらったのです。
今から30年以上も前の話なのですが、誰からという点だけでなく、どのような職場の光景の中で声をかけてもらったのか、ということまでかなり覚えています。
それ以降は仕事を進める際の気持ちにかなりゆとりを持てるようになったことは間違いありません。
決してミスをしてよいわけではないわけですが、あまりにもミスを恐れるあまり萎縮してしまって業務効率を落とすよりは、多少リスクを取って効率を追求することが正解、という事例になるはずです。
人間だれでもミスをしたいとは思いません。
一方でミスを怖がって仕事をしていたのでは、いつまでたっても殻を破れない、ということにもなります。
そこを見極め、成長を促すことは上司にとっての大事な役割です。
その上司がマネジメントシステムのこと、そして是正処置の本質を理解できているかどうかで、部下への声かけ、指導の仕方にはずいぶん差ができるのではないでしょうか。
私が新入社員であった当時、ISO9001規格自体は発行されてはいましたが、日本ではまたほとんど知られていない時期です。
当然会社もISOには無縁ですし、上司もその存在を知っていたとは全く思えません。
ですが部下の対応は身に付けてくれていました。
つまりISOに書かれているからということではなく、組織経営の基本事項として身に付けていた、ということです。
書籍「ISO運用の“大誤解”を斬る!」(日科技連出版社刊)でもいろいろ取り上げられていますが、ISO9001が生まれる前と生まれた後で、組織管理の本質が変わったわけではありません。
あくまでそれまで世の中の組織で実践されてきたグッドプラクティスがISO規格にまとめられた、と考えて一向にかまわないのです。
是正処置と応急処置では随分とその中身に違いがある点、そしてあくまで仕事は人がするものである一方、その人を守るために仕組みが大事である点を、是正処置、という概念から学ぶことができる、という小職のつぶやきでした。
少々開示するのは恥ずかしい内容にもなっておりますが、一読後はご放念いただければ幸いです。
(青木 恒享)