活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第2弾 第9回 福丸典芳(その2)
2019.01.21
今回は品質不祥事の対応法について考えてみましょう。
1.品質不祥事(情報の改ざん・隠ぺい)を防ぐための重要事項とは
品質不祥事は、品質マネジメントの運営管理に欠陥があることが原因と思われます。
これを防ぐためには、私たちが日常的に行っている業務を合理的で単純なものにし、標準化・権限移譲の際に問題の発生を事前に想定し、品質に対する認識についての教育・訓練を適切に行うことが大切です。
また、品質マネジメントはその責任を負っている人が行うのではなく、経営者から現場に至るすべての機能で一体化して行う必要があります。
この一体化によって品質重視の考え方を各人が認識することにつながります。
品質マネジメントの最終責任者は経営者です。
したがって、経営者が品質マネジメントに真摯に向き合い、率先垂範して取り組むことが大切であり、次に示す事項が必要ではないでしょうか。
① 経営者が品質マネジメントに対する役割を明確にすること
経営者が品質マネジメントに対する関りを強化することで、組織的に品質に取り組む姿勢を示すことができます。
② 顧客に提供する製品・サービスの適合の重要性を組織内に認識させること
“品質第一”という考え方を経営者自らが認識し、事業プロセスで行動することが大切ではないでしょうか。この行動を見て、組織内の人々が顧客指向の行動をとることにつながり、品質不祥事を起こすと顧客に迷惑をかけるということを認識するようになります。
③ 未然防止活動を活性化すること
問題が発生してから慌てて処置するのではなく、品質マネジメントの計画の段階でリスクへの対応ができるような取り組みを構築することが大切です。
④ ヒューマンエラーや意図的な不順守に起因するリスクの洗い出しを行い、対策をとること
現在運営管理している品質マネジメントでのヒューマンエラーや意図的な法令・規制要求事項や作業手順の不順守に対するリスクアセスメントを行い、影響の大きいリスクへの対策をとることが大切です。
⑤ 品質保証に関する教育を行うこと
品質保証における活動はすべての部門で行うことが基本であるということを理解させるため、品質保証活動に関する教育訓練を継続的に行うことが大切です。
2.品質問題の根源は経営者のリーダーシップにあるのでは
品質問題を発生させないためには、経営者が人を育てることと効果的で効率的な仕組みを構築することが基本ではないでしょうか。
また、品質は品質保証部長に任せて無関心でいると品質経営が機能しなくなり、ゆでガエル化(おかしいなあ?と思っていることも日常化してしまうと、その問題に気付けず、やがて悲惨な結末を迎える、いつも不良が発生しているとそれが当たり前になって、問題を大きくする)の要因になり得ます。
このような状況にならないためには、経営者は、「マネジメントの質」、「組織能力の質」、「ひとの質」、「ものづくりの質」を高めるという「品質経営」に取り組むことが必要ではないでしょうか。
3.品質不祥事等の問題を検出できる方法があるのか
品質不祥事等の問題を検出するのは難しいと思われますが、何も行動しないとやる気がないと社会から非難されます。
したがって、品質不祥事等を起こさないための活動を行うことが大切です。
この活動の一つとして、マネジメントシステム監査に合わせた製品監査を行う方法があります。
(1) マネジメントシステム監査
マネジメントシステム監査で品質不祥事等を検出することは難しいですが、監査の精度を高めてその足掛かりを見出すことは可能ではないでしょうか。しかし、そのためには、次の事項が前提条件になります。
① 監査員の力量を向上させること
監査で単なる要求事項との確認をするだけでは、問題を検出できないので不十分です。
データを改ざんされたらわからないでしょう。
② 業務に関するリスク分析の知識をもたすこと
リスク分析の知識があることで、改ざんのリスク、意図しないエラーのリスクの検出が可能になります。
③ プロセスアプローチに基づく有効性評価ができること
プロセスの相互作用を評価することで、問題点を抽出することが可能になります。
(2) 製品監査
製品監査とは、製品・サービスが、要求事項を満たしているかを顧客の視点で確認する活動を行うことです。
このためには、次の視点で製品監査を行うことが大切です。
・製品が顧客の要求事項を満たしているか。
・製品規格が妥当であるか。
・規格を満たすように作られているか。
具体的には次の方法で行います。
・監査員を経営者が指名します。
・工程内、最終検査後、出荷前の製品からサンプルを抜取り、製品仕様と比較するとともに、その製品の検査データとの照合を行います。
・計画的に行うのではなく、抜き打ちで行います。
・監査結果は、経営者に直接報告します。
4.調達者には責任はないのか
品質不祥事等を発生させた企業が悪いことは当たり前ですが、調達者も考慮すべき事項があるのではないでしょうか。
調達者には購入責任があり、供給者を選択し、評価した責任があることを認識することが大切です。
このためには、調達者は次の事項を行うことが必要ではないでしょうか。
・第二者監査の実施
供給者に対して、製造プロセスや検査プロセスを中心に工程監査を行います。
この際には、作業手順者や工程内の各種データの確認(作業中の状態や作業中に収集しているデータ、過去のデータ)を行い、問題がないかを評価します。
・受入検査の実施
受入検査を臨時(抜き打ち)に行います。
なお、自社に検査設備がない場合には、供給者の検査場所で立会検査を行います。
この二つの方法では、監査員や検査員の力量がカギになります。
企業にとって品質不祥事等は持続的成功の存続に影響を与えますので、以上のような活動を検討し、品質マネジメントを見直すことが大切だと思います。
日本の品質を良くするために、原点に戻ってもう一度考えてみましょう。
日本の品質は世界一でなければならないと思っています。
(福丸典芳)