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ここがポイント、QCツール 第43回 管理指標(3) (2017-9-4)

2017.09.02

 

前回,前々回に引き続き,今回が管理指標の最終回(第3回目)となります.

 

 

3. 適用場面と効用

 

管理指標を適用したい場面というのは,管理対象となっている関心ごとをより良くしたい,良い状態で維持したい(または,これ以上悪い状態にならないようにしたい),その良し悪しが自分に何らかの影響を与えるような状況にあるときです.

 

こう言ってしまうと,あらゆることに適用できるように思えるかもしれませんが,その通りです.

これまで主な例として挙げてきた製造現場はもちろんのこと,企画部門,設計・開発部門,サービス部門のどこでも適用可能です.また,企業活動そのものだけでなく,スポーツの世界や,日々の日常生活においても適用可能です.

私の個人的な意見・見解ですが,家庭内の持続的な平和(良い状態)を保つための最も重要な管理指標は,妻の精神的安定性でしょう.

それをいかにサポートして維持し,逸脱した場合にいかに安定状態に早く復旧させるかが,夫としての日常生活における注目すべき関心ごととなります.

 

さらに,管理指標を考えること自体が良い効果をもたらすこともあります.

特に,日頃から管理対象となっている業務を実施している方は,それを実施することが当然であり,慣習にすらなっています.

このような状況下で管理指標を考えてみろと言われれば,日常業務から少し離れた鳥瞰図的な視点から,自分が行っている業務は何のためにあるのか,目的は何か,良い業務をしたときとそうでないときがあるがその成否を分ける要因はどこにあるかを考えることにつながります.

 

これによって,これまで当たり前だと思ってやっていた業務の目的についてより深い理解が得られ,さらに業務のアウトプットをより高めかつそれを維持していくためには,一連の業務のどこをどのように気を付けて実施すればよいかについての業務実施上のコツがわかってきますので,自ずと得られる結果も良くなっていくのです.

 

 

 

4. 他手法・活動との関係

 

既に1.で述べましたが,管理指標とは業務の管理サイクルであるPDCAと密接な関係があります.

Planでその達成目標とともに設定され,Checkで実際にその管理指標に基づいて業務の目的達成度合いが評価され,未達であればActで目的達成手段・方法が改訂され,次のPDCAサイクルの中で目的達成度合いが再度評価されます.

管理指標はまさにPDCAサイクルを回すキーであるといえます.

 

また,何らかの業務プロセスを管理したいときには必ずと言っていいほど管理指標を使うことになりますので,いわゆるプロセス管理・プロセス保証という活動においても必要不可欠なものです.医療においても,QI(Quality Indicator)という言葉が流行っていますが,これは結果としての医療の質を測り,その提供プロセスを適切に管理,改善していくことを推奨しています.

 

企業の方々にとっては,KPI(Key Performance Indicator)というワードのほうが馴染みがあるかもしれません.

これも,結果として得られる業務パフォーマンスを左右するような,着目すべき業務プロセス上の重要箇所をKPIとして取り上げ,それを達成することによって結果として高い業務パフォーマンスを確実に生み出そうという考えを基盤とします.

これに類似して,BSC(バランスド・スコアカード)は財務の視点←顧客の視点←内部プロセスの視点←学習と成長の視点の各段階でKPIを設定し,かつそれらKPI間の因果関係を考慮する(=戦略マップの作成)ことも推奨しています.

 

 

 

5. 注意事項

 

最後に,管理指標を実際に使用する際の注意事項を3点ほど説明したいと思います.

 

第1に,管理指標の本質的な性格についてよく理解しておく必要があります.

すなわち,管理指標によって知りたいことのすべてを把握できるとは限らないという理解です.

把握したいことのある側面・断面を知ることによって,アクションの契機とするために管理指標を設定している,とまず考えるべきです.

この理解が疎かになると,管理指標の値そのものを目標レベルにすること自体を目的化しかねなくなります.

我々が最終的にやりたいことは,管理指標を設定し測ること自体ではなく,あくまでもその管理対象となっている業務のアウトプットを高めることなのです.

 

なお,管理指標が我々が知りたいことのある側面・断面であることを考えれば,複数の管理指標を同時に用いることも可能です.

さらに,定量化して計測できるものはそのほうがよいのですが,定性的な指標であったとしてもかまいません.

要するに,複数の管理指標を用いろうが,定量的・定性的な指標だろうが,その指標をきっかけとして管理対象業務に対して的確なアクションを施すことができればそれでよいのです.

 

第2に,そもそも業務目的の達成度合いを端的に測る指標の設定が難しい場面に出くわすことも少なくありません.

この場合には,その業務がうまく行ったときと問題があるときをいくつか想定し,どこにその差が表れるかを考察するとよいヒントが得られる可能性があります.

例えば,手順類が適切に設定され運用されているかどうかを的確に測るには,それが適切に引用されている状況とそうでない状況(標準と実際の手順が異なる,手順が長期にわたって改訂・更新されていない,手順を作業者がそもそも知らないなど)を複数浮かべてみるのがよいでしょう.

業務が効率的に進んでいるかどうかを測りたいときも同様に考えると,効率的でない状況としては業務の途中で手戻りが発生している,工数(作業者数,消費した材料費など)が多くかかっているなどを想定することができ,それを測る指標として何が良いかを決めればよいでしょう.

 

第3に,当然ながら管理指標やその管理(達成)目標が適切に設定されていなければなりません.

安易に,目の前にある,達成しやすい(または,見た目にインパクトがあり見栄えがするだけの)指標や達成目標を設定してしまっては,意味がありません.

妥当な管理指標とその目標設定においては,まずは社会や自社の経営ニーズなどの上位の目的と合致していなければならないでしょう.

そして,それを実現する手段・方法に関する自分たちが保有している“実力”を客観的に見極めつつ,どの程度であれば達成しうるかを考えることも重要です.

そして,いつまでにどこまで達成したいのかという時間軸の要素も考慮すべきでしょう.最後に,自分たちの管理範囲外からの影響,リスクについてもあらかじめ織り込むことができれば,他に言うことはありません.

 

 

 

6. 参考文献

 

飯塚悦功(2009):「シリーズ<現代の品質管理>1 現代品質管理総論」,朝倉出版

(社)日本品質管理学会(2009):「新版 品質保証ガイドブック」,日科技連出版社

 

(東海大学 金子雅明)

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