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ここがポイント、QCツール 第29回 プロセス分析(2) (2017-5-16)

2017.05.16

 

 

プロセス分析の2回目です。

 

プロセス分析には2つの機会があると言いましたが、今回は第一の機会「プロセス設計」について述べます。

プロセス設計においては、最初に自分たちの現状のプロセス分析をしなければなりません。

そのためには、組織に存在するプロセスを明確にするとともに、存在させるべきプロセスも検討しなければなりません。

 

 

2.事業プロセス

 

組織に存在するプロセスのことを事業プロセスと呼びます。

事業プロセスとは「顧客のために製品又はサービスを創り出す、組織が全員で日常的に行っている活動の集まり」です。

組織は、顧客に製品を買っていただくことで利潤を得て成長していくことができます。

すべての組織活動は、この顧客に製品又はサービスを提供する活動に繋がっていなければなりません。

 

組織の管理者は、事業体(会社全体、事業体又は部門)を組織図で表しますが、組織図には欠けているものがあります。

顧客が描かれていませんし、顧客に提供する製品及びサービスが描かれていません。

したがって、組織の行う企画、営業、製品及びサービスの設計、製造、引渡しなどの業務フローをイメージできません。

利害関係者は、組織図を見ている限りこの事業体を完全に理解することができません。

 

組織内の人は自部門の製品及びサービス、顧客及び競合相手を理解しているでしょうが、これについても、大きな組織になると、組織全体が顧客に向かってどのように動いているのかを理解することは困難になるでしょう。

 

組織図はあくまでも事業推進をする手段、すなわち人的資源(目的、責任、権限など)構造を表したものですから、事業フロー(事業プロセス)は表現できなくて当然です。

中小企業では、誰もが隣の人、部署を知っており事業の流れは明確になっています。

 

ところが、組織が成長し多くの人が雇用され、組織構造が複雑になってくると、事業プロセスが見失われ、組織図のみが組織内で意識され、顧客の存在を見失うことになります。

組織には、事業推進のためにいくつかの種類のプロセスがあります。

 

事業プロセスの分類には、識者による次の3分野が推奨できます(米マイケル・ポーター、マクネア C.J.他)。

 

 

(1)「主要分野」:製品又はサービスを製造、提供するプロセス

 

主要分野には、組織の製品・サービスの製造・サービス提供を中心に、その前後の各種業務、例えば営業、商品企画、設計、購買、検査、出荷などのプロセスが存在する。製造現場、サービス現場、事務所現場の業務は、ほとんどがこの主要分野のプロセスになる。

 

(2)「支援分野」:組織の機能を支えるプロセス

 

支援分野には、人事、総務、経理、情報技術(IT)、設備管理、品質保証などの組織のインフラともいえるプロセスが存在する。

 

(3)「経営分野」:経営戦略、方針などを策定するプロセス

 

経営分野には、組織の中長期戦略策定から事業計画策定、方針作成、目標管理、改善などマネジメント業務全般をカバーするプロセスが存在する。

 

 

 

3. プロセス設計

 

プロセス設計における基本的な考え方は、プロセスの目標が達成できるようにプロセスそれぞれに必要と考えられる諸要素を明確にし、そのとおりに実施すれば期待する結果(パフォーマンス)が得られるような明細を決定することです。

プロセス設計で決めるべき明細には次のようなものがあります。

 

(1) プロセスの目的

(2) プロセス目標

(3) プロセスオーナー

(4) プロセスの判断基準

(5)プロセスの方法

(6) プロセスの監視及び測定

(7) プロセスのパフォーマンス指標

(8) プロセスに必要な資源

(9) プロセスの責任、権限

(10) プロセスのリスク及び機会

 

プロセス設計においては、多くの場合プロセスを活動に分解します。

分解された活動はサブプロセスと呼ばれ、上記の仕様の多くはサブプロセスそれぞれごとに決定されます。

活動(サブプロセス)の順序及び相互作用は、フロー図を用いて表わすと良いでしょう。

 

プロセス設計で重要なことは、3分野の事業プロセス全部についてパフォーマンスを意識しなければならないということです。

プロセスは「バリューチェーン」と見ることができます。

製品及びサービスを生み出し、それを顧客に引き渡すまで、プロセスの一連の活動は、前の活動に対し価値を創造しています。

例えば、設計プロセスの活動の一つに「設計図を検証すること」がありますが、この活動は、設計行為に対して信頼性という価値を付加します。

 

プロセスは、また、資源を消費します。プロセスは、プロセスが生み出す価値だけではなく、その価値を創造するに必要となる資源も評価しなければなりません。

プロセス設計における重要な2点について解説をします。

 

A)プロセスの目標設定

プロセス毎に製品及びサービスに関連する、あるいはそれらを構成する品質、納期、コストに関する目標を設定する。

 

B)プロセスの諸要素の決定

目標を効率的に達成するようプロセスの一連の活動の諸要素の明細を決定する。

 

 

3.1 プロセスの目標設定

3.1.1 主要分野のプロセスの目標

 

主要分野のプロセスには2種類の目標があります。

一つは外部顧客と接触するプロセス(例えば、営業販売、サービス提供など)の目標であり、この目標は組織全体の目標と顧客要求事項から策定されます。

もう一つは主に内部顧客と接触するプロセス(例えば、設計、製造、検査)の目標ですが、それは内部顧客のニーズによって決められます。

 

両方のプロセスとも内部又は外部の顧客の要求に役立つために存在しています。

外部顧客に製品及びサービスを提供するプロセスは、その製品及びサービスが顧客のニーズを満たす程度によって評価されるべきです。

内部顧客に製品及びサービスを提供するプロセスは、内部顧客の要求を満たすことと、外部顧客に最終的に付加する価値の両方から評価されるべきです。

どちらの場合も、最終顧客にどのような価値提供できたのかが、そのプロセスの価値を決めます。

その際に、プロセスを実行した部門(プロセスオーナーなど)は当然のこととして評価の対象になります。

その意味でプロセスの目標は担当する関係部門の目標(パフォーマンス指標など)と整合したものになっているはずです。

 

例えば、住宅設備会社の据付けプロセスを考えてみましょう。

 

据付けプロセスを構成する活動の部門の一つに営業部門があります。

営業活動は据付けプロセス実現の活動には加わりませんが、営業担当が設備据付けの仕様を含む注文を書くことで据付けプロセスの一部を構成します。

据付けプロセスは施工部門が主管部門(プロセスオーナー)ですが、営業担当が作成する仕様書は据え付けの品質、納期及びコストに重要な影響を与えるという意味で重要な活動です。

据付けプロセスは組織を横断する一連の活動であると位置付けると、営業部門が行う活動にも目標が浮かび上がってきます。

ただ、この目標はプロセスの目標ではなく、あくまでもプロセスを構成する活動の目標であることに留意が必要です。

 

 

3.1.2 支援分野のプロセスの目標

 

支援分野は組織のインフラに該当する業務を行っています。

支援分野のプロセスの目標は単純で明確であり、それは主要分野と経営分野の活動が効果的で効率的に実施されるよう支援することです。

 

その意味で支援分野は次のような要素の最新情報を常に監視し、新しい方法、手段などの採用を積極的に検討すべきです。

 

・法的要求事項、規制に関すること

・内部統制に関すること

・情報技術(IT)に関すること

・教育・訓練に関すること

・不動産に関すること

・金融、投資に関すること

・労働市場に関すること

・福利厚生に関すること

・移動手段に関すること

・海外を含む宿泊に関すること、など

 

プロセスは業務を推進するための経路、手段を決めることになるので、行先すなわち目標は常に意識して明確にしておかなければなりません。

主要分野、経営分野が何を望んでいるのかを常に考えること、例えば、主要分野が望んでいる効果的な教育・訓練などについては、部門がどんな結果を望んでいるのかを最初に把握し、その後実施手段を決めなければなりません。

 

 

3.1.3 経営分野のプロセスの目標の設定 

 

経営分野のプロセスは、組織の事業全体の方向性、人材開発、新商品開発などを取り扱いますので、経営戦略の一部といえます。

次の例のような事業戦略の目標は、そのまま経営分野のプロセスの目標になります。

 

(1)市場における競争優位性

(2)新製品及び新サービス

(3)投資計画と採算性

 

市場で順調に事業展開をしできた組織は、特に事業戦略を意識してこなかったかもしれません。

また、中小企業には事業戦略という言葉は敷居が高く聞こえ、大企業のやることであると思われてきたかもしれません。

しかし、言葉は別として、現在の状況がいつまでも続くことはないと誰もが感じているはずです。

 

トップマネジメントは事業戦略を考え、その戦略から導かれる全社的な目標を明確にしなければなりません。例えば、つぎのような目標設定です。

 

(1) 新製品をタイミングよく開発する。

(2) 顧客価値の差別化を追い求める。

(3) 新しい事業領域を探し求める。

 

これらの目標は、まだパフォーマンス指標(いつまでに、どの程度の、どのような顧客に向けてなど)を持っていません。

組織は既存の製品及びサービスが賞味期限を終えない内に、次の存続のための戦略目標を達成しなければ持続的成功は得られません。

したがって、これらの目標には戦略的なパフォーマンス指標(いつまでに、どの程度の、どのような顧客に向けてなど)が必要です。(第3回に続く)

 

(平林 良人)

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