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ここがポイント、QCツール 第28回 プロセス分析(1) (2017-5-1)

2017.05.01

 

今回からはテーマ「プロセス分析」について、次のように3回に分けた連載でお話しをしていきます。

 

 

第1回 プロセス分析とは:

 

ここでは組織のプロセス分析に関わる用語・概念を説明します。

プロセス、事業プロセス、プロセス設計、プロセス管理、プロセス保証、プロセスアプローチについて解説をします。

プロセス分析は「プロセスの維持向上・改善・革新につなげる目的で、プロセスにおける特性と要因の関係を解き明かすこと」(JSQC定義)とされています。

 

プロセス分析を実施する機会は2つあります。一つはプロセスを設計する際に、効果的に、効率的に業務を設計するためです。もう一つは、業務推進した結果と計画に差異が生じた場合、その原因を明確にして改善するためです。

 

 

第2回 事業プロセスとプロセス設計:

 

経営環境は目まぐるしく動いています。組織は常に組織の実態を分析し、最新の業務推進体制に手直しすることを意識しなければなりません。

ISO9001:2015では組織の業務全体を「事業プロセス」と位置付けして、要求事項を事業プロセスに統合することを求めています。

事業プロセスの設計、見直しでは、インプット、アウトプット、判断基準、方法、監視・測定、パフォーマンスファーマンス指標などの要素を明確にすると同時に、最新化しなければなりません。

 

 

第3回 プロセス管理とプロセス改善:

 

組織が設計した、或いは見直したプロセスは、パフォーマンス向上に繋がらなければなりません。

そのためには、適切な運用管理を日常的にしていく必要があります。

プロセスがその目標を達成できなかった場合は、該当するプロセスが設計された通りに実施されなかったのか、プロセス設計そのものがすでに古くなり、実態との間にギャップを生じているのかを明確にしなければなりません。

 

 

 

1.プロセス分析とは

 

プロセス分析は「プロセスの維持向上・改善・革新につなげる目的で、プロセスにおける特性と要因の関係を解き明かすこと」と定義されています(JSQC定義)。

 

従来の工業化時代と、今日の情報化時代の経営の違いは、組織のスピードにあります。

組織のスピードは圧倒的に早くなり、かつサプライチェーンとして連携する組織は地球規模に広がりました。

組織がリソースを最大限に活用して期待する成果を上げるためには、組織構造、プロセス、その中にある各種要素の見直し、最適化を図っていかなければなりません。

組織の成果を最大限にするための手段の一つがプロセス分析であり、プロセス分析は品質管理に必須であると同時に、経営にとっても重要なツールであると言えます。

 

プロセス分析は、組織の横構造(連絡協調構造)を解き明かすときに活用されることが多く、組織の縦構造(指示命令構造)の解析には余り使用されません。

プロセスを横構造(連絡協調構造)の要素として捉え、組織全体をプロセスネットワークとして俯瞰することは、組織全体の構造を分析することに役立ちます。

 

日本でも、TQC(Total Quality Control:総合的品質管理)が全盛の時代に「機能横断的活動」という考え方がありましたが、これはプロセスの横構造を表現した言葉でした。

しかし、個人のプロセスを分析する時には単一プロセスを分析することになり、プロセスの中味に深く踏み込んでいかなければならず、組織の横構造(連絡協調構造)の概念は余り意識しません。

 

プロセス分析は基本的には日本語でいう「工程分析」と同じですが、もう少し広範な概念です。1970~80年代、TQCにおいては、工程設計、工程分析、工程改善ともの作りの世界に特有な用語が用いられましたが、その意味するところは主に工場管理の活動であり、事務部門まで含んで理解していた組織は少数でした。

しかし、プロセス分析は工場、事務部門を問わず組織のすべての活動を対象としています。

また、工程設計、工程分析、工程改善などを総合した活動は工程管理と呼ばれていましたが、今日ではプロセスマネジメントと言われています。

 

 

 

1.1 プロセス

プロセスは日本では工程と呼ばれ「インプットをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に作用する一連の活動」と定義されています(JSQC定義)。

プロセスは何らかのインプットを受け入れ、それに対してある価値を付与し、その成果としてのアウトプットを生成する活動です。

品質管理の基本的な考え方は、「品質は工程で作り込め」ということですが、工程、すなわちプロセスは顧客ニーズに合った製品、サービスをアウトプットされるように、すべての事業プロセスが設計されていなければなりません。

 

 

1.2 プロセス設計

プロセスは目的を達成するために組織で設計されなければなりません。

プロセス設計のツールとしては、日本では「品質機能展開」が知られています(ここがポイント、QCツール 第4回 QFD(Quality Function Deployment)第2の役割:業務機能展開(2016-11-1)を参照)。

また、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis:故障モード影響解析)も設計プロセスにおける分析手法として活用されています。

工程FMEAでは、工程で発生する不良をモードとして取り上げて分析をします。

 

1990年代には、BPR(Business Process Reengineering)、ABM(Account Based Marketing)、バランススコアカード、シックス・シグマなどがプロセス分析に関係するモデルとして発表されています。

ISO9001もプロセス設計のツールとして活用できます。

 

ISO9001:2015規格においては、品質マネジメントシステム(QMS:Quality Management System)を構築する際に、事業プロセスを明確にし、それと整合したQMSに必要なプロセスを明確にし、次のことを設計(結成)することを要求しています。

 

a)プロセスへのインプット

b)プロセスからのアウトプット

c)プロセスの順序及び相互作用

d)プロセスの判断基準

e)プロセスの方法

f)プロセスの監視及び測定

g)プロセスのパフォーマンス指標

h)プロセスに必要な資源

i)プロセスの責任、権限

j)プロセスのリスク及び機会

k)プロセスの評価及び必要な変更

l)プロセスの改善

 

 

1.3 プロセス管理

プロセス管理は「ねらいとする成果を生み出すためのプロセスを明確にし、個々のプロセスを計画どおり実施する、そのうえで、成果とプロセスの関係、プロセス間の相互作用を把握し、一連のプロセスをシステムとして有効に機能するように維持向上・改善、改革すること」と定義されています(JSQC定義)。

プロセス管理の基本的な考え方は、それぞれのプロセスにおいてプロセス保証を行うことですが、プロセス保証を行う上で、狙いどおりの結果が得られるようにPDCAを回すことも重要なこととされています。

プロセスをどの程度に細分化するかは、組織の規模・成熟度、要求の程度などによります。

プロセス管理を組織全体で行うのか、個人レベルで行うのかによっても細分化の程度は異なります。

 

 

1.4 プロセス保証

プロセス保証は「プロセスのアウトプットが要求された基準を満たすことを確実にする一連の活動」と定義されています(JSQC定義)。

効果的なプロセス保証のためには、プロセスを細かく分解して考えることが必要です。

一つのプロセスを幾つかの活動に分解して作業手順書に設定し、作業者に教育訓練したうえで、目標とするアウトプットが達成できているかをチェックすることでプロセスを保証していきます。

 

 

1.5 プロセスアプローチ

ISO9001:2015が要求している概念です。

プロセスアプローチは「組織の品質方針及び戦略的な方向性に従って意図した結果を達成するために,プロセス及びその相互作用を体系的に定義し,マネジメントすること」と説明されています。

品質マネジメントシステムでプロセスアプローチを適用すると,次の事項が可能になります。

 

a) 一貫した理解のもと要求事項に適合することができる。

b) プロセスで付加すべき価値を適切に検討できる。

c) 効果的なパフォーマンス達成ができる。

d) 分析・評価したデータ及び情報に基づいてプロセスを改善できる。(第2回へ続く)

 

(平林 良人)

 

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