ここがポイント、QCツール 第22回 新QC七つ道具(5):アローダイアグラム法 (2017-3-13)
2017.03.13
新QC七つ道具の第5回は,アローダイアグラム法を取り上げます。
新QC七つ道具のうちで,今回のアローダイアグラム法と次回以降で取り上げる,PDPC法,マトリックス・データ解析法これらの3手法を実務で運用できることが,QC検定(品質管理検定)1級レベルとみなされます。
■□■ アローダイアグラム法 ■□■
・アローダイアグラム法とは,その目的
アローダイアグラムは,「日程計画を表すために矢線を用いた図」(文献1)を言います。
アローダイアグラム法は,日程計画を示す際に矢印の線を用いることから命名され,パート(PERT:Program Evaluation and Review Technique)による日程計画でよく用いられます。
パートは,米国のポラリスミサイル開発に適用され,開発期間を約2年短縮したと言われています。
・アローダイアグラム法の実施手順の本質
アローダイアグラム法を使用するときは,実線の矢線(時間を必要とする要素作業),破線の矢線(所要時間ゼロで,単に作業の順序関係を表すダミー),丸印(結合点)の使い方などについて基本的なルールをよく理解したうえで正しく使うことが大切です。
例えば,次のようなルールに留意してください。
・作業は,一対の結合点により一意で表します。結合点番号は,正の整数とし,作業の終点の方を始点より大きい数字にします(例えば,①→②など)。
・作業の順序関係を見極めて作図します。作業は時間の流れに準じて,左から右へ移行します。
・並行して進められる作業は,積極的に並行作業を作ります。
・作業がグルグル回りで進まなくなるループは入れないようにします。
・煩雑さを避けるため,不必要なダミーは用いません。
・アローダイアグラム法の適用場面と得られる効用・メリット
アローダイアグラム法の活用によって得られる効用・メリットを次に例示します。
・仕事の着手前に,工程全体を目で見えるようにし,工程上の問題を明確にできる。
・矢線を用いてネットワークを書く過程で,新たな改善策を発見できる。
・仕事の進捗の全体的な把握ができ,計画変更時に全体を見通して素早く処置できる。
・目で見て分かりやすく,関係者の意思疎通や合意形成が容易になる。
・他の手法との関係-特に新QC七つ道具
系統図法やマトリックス図法を用いて問題・課題を解決する方策を明らかにしたときに,方策をどのような順番で,いつ実施するのかをアローダイアグラム法で明らかにすることができます。
・実施・運用時の注意・留意事項
アローダイアグラム法を活用するうえでの留意事項を次に例示しますので,チェック項目として利用してください。
・アローダイアグラム法を用いて実施する課題(目的,テーマ)が明確ですか?
・課題の解決に必要な作業を漏れなく列挙していますか?
・各々の作業を左から右に,正しい順序で配列していますか?
・結合点の位置,矢印(実線・破線)の関係は適切ですか?
・各作業の所要日程(例えば,工期,工数など)の見積もりは正確ですか?
・最早結合点日程,最遅結合点日程,余裕時間,クリティカルパスは明確ですか?
・作業の進捗に合わせてアローダイアグラムの適切さを適宜見直し,必要な修正をしていますか?
■参考文献
- JIS Q 9024:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善-継続的改善の手順及び技法の指針」
- 「全社的品質管理推進のための管理者スタッフの新QC七つ道具」,水野滋監修,日科技連,1979
- 「やさしい新QC七つ道具」,新QC七つ道具研究会編,日科技連,1984
村川賢司(前田建設工業)