超ISO企業研究会

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活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第7回 棟近雅彦

2016.10.30

 

みなさんこんにちは.

今回は棟近雅彦がつぶやきます.

 

早稲田大学創造理工学部経営システム工学科に所属しています.

品質マネジメント,統計解析を専門としています.

学部生の頃から品質マネジメントを勉強し,35年間,どうすれば品質のよい製品・サービスができるかを考えてきました.

 

主に製造業の品質マネジメントを見てきましたが,2000年頃から医療の品質マネジメントも取り組むようになりました.

病院にいかに品質マネジメントシステムを導入・推進するかが課題です.

 

 

企業とは経営環境や業態がかなり異なりますので,医療向けに工夫しなければならない点も多々あるのですが,基本的には仕事の仕組みをきちんと作っていくことが重要であることに

変わりはありませんから,企業でやってきたことがそのまま適用できるものも少なくありません.

 

医療での品質マネジメントへの取り組みも15年以上が経ち,医療界でも質向上の活動が定着しつつありますが,品質マネジメントシステムの完成度でいえば,企業に比べればまだまだの点が多々あります.

 

品質マネジメントシステムを推進する上でのポイントはいくつかありますが,病院と企業を比較したときに,病院が遅れている点は何か,という質問をよく受けます.

 

 

私は第一に標準化,第二に教育と答えています.

 

 

標準には,作業ミスを防ぐ,作業能率を上げるなどの効用もありますが,何といっても標準化ができていれば,改善が促進される,改善効果が上がるといったことが最も重要です.

標準は改善の基盤です.改善の出発点,すなわち着実によくする対象であること,そして改善結果を反映させ,維持すること,という改善において二つの大きな役割を持っています.

実は,医療のことを考える前の20年間は,標準化はそれほど重要と思っていませんでした.

 

私が訪ねた企業は,標準化は当たり前の活動で,それほど重点活動として取り上げられることもありませんでした.

今思えば空気のような存在で,必要不可欠なものだから,気がつかなかったということだと思います.

病院の品質マネジメントに関わるようになって,企業では当たり前であった標準化が遅れていることに気がつきました.

 

正確に言うと,病院でも今では改善活動を盛んに行うようになっていますが,その成果が生かされない,いわば毎年毎年,打ち上げ花火を上げるような活動になっていることに気がつきました.

 

そこで,標準化というのが,きわめて大事な活動なんだ,ということに気づかされました.

 

 

それまではできていて当たり前のところしか見ていませんでしたので,できていないところで問題が起こるところを見て,あらためて気づいたということです.

 

体系的な教育,キャリアパスを考慮した教育が,組織的に行えていないのも医療の弱点と考えています.人の入れ替わりが激しい業種なので,難しい側面があるのも事実ですが,特に質・安全に関する教育は,まだまだ不十分です.

品質マネジメントシステムでシステムによる質を保証する体制を構築するとしても,医療の場合,ほとんどが人手による仕事ですので,人の力量・能力の向上は欠かせません.

2000年以降も,企業の品質マネジメントも引き続き見ています.最近思うのは,企業の強みであったはずの,標準化や教育は大丈夫でしょうか,ということです.私が2000年以前にそ

うであったように,標準化や教育の重要性を忘れ,おろそかになっていることはないでしょうか.

 

ISO 9001の活動は,まさに標準にもとづいて基本動作を徹底することだと思いますが,そんなのはレベルが低い話しであって,それだけやっていても仕方ない,と思っている企業が少なくない気がします.

 

それだけやっていてもだめなのは事実ですが,その活動は基盤であって,それがしっかりしていてその上に行けるものです.

 

教育はどうでしょうか?QC七つ道具やQCストーリーなんて今さら,という雰囲気はないですか.教育は効果が見えにくいので,経費削減の格好の対象となりがちです.終身雇用も崩れつつあって,教育投資をしたくない,という声もあります.

 

 

私は,日本の産業力の低下と,標準化,教育の弱体化は無関係ではないと思っています.応用力を付けるためには,基礎力がまずあっての話しではないでしょうか.

 

 

 

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