活動報告 超ISOメンバーによるつぶやき 第2回 土居栄三
2016.03.04
つぶやき第二回を担当する土居です。
2003年から、大阪の生活協同組合でマネジメントシステム(環境、品質、労働安全衛生等々)の事務局を担当して、現在は嘱託として生協に勤務しながら、マネジメントシステムに関わる研修や、他組織のマネジメントシステムのお手伝いをしています。
前回、住本さんが、『「ISO 9001を導入したが少しも良くならない」という前に、「規格に適合すれば成果が得られるはず」から、「マネジメントシステムを期待通り機能させることで規格に適合する」と発想を変える必要があると思います。』と仰っていました。
私は、これに関連して、「ISO9001を導入したが少しもよくならない」と嘆く前に、そもそも「何を期待してマネジメントシステムを導入するのか」ということについて、つぶやいてみたいと思います。
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ISO9001:2015の発行を受けて、各組織で規格改訂に対応したシステムの見直しがすすめられていることでしょう。私も、この間何回か「2015改訂対応セミナー」を担当させていただきました。
ところで、IAF(国際認定フォーラム)は、ISO9001の主な改訂内容の一つに、「顧客満足度を改善するため期待される成果(desired outcomes)を達成することを強調」をあげています。
注:「desired outcomes」は、最終的に「intended results(意図した結果)」という用語になりました。
確かに、ISO9001:2015は、あちらこちらで「品質マネジメントシステムの意図した結果」について言及しています。すっかり「有名」になった、「4.1 組織及びその状況の理解」でも、そこで要求されていることは「組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を明確に」することですし、「5.1 リーダーシップ及びコミットメント」では、トップマネジメントへの要求事項として「品質マネジメントシステムがその意図した結果を達成することを確実にする」ことが明記されました。
これらの「意図した結果」の強調の背景に、いわゆる「Output Matters」と呼ばれる問題(ISO 9001の認証を取っているにもかかわらず、顧客要求を満たすような製品品質になっていない現状)があることは言うまでもないことでしょうが、「ISOを導入しても少しもよくならない」ことの原因(の一つ)は、これまでは規格が「意図した結果」を強調していなかったからだ ・・・ などと言ったら、随分おかしなことを言っていることになるでしょう。規格が明示していようがいまいが、組織は、何らかの「意図した結果」を得るためにこそ、マネジメントシステムを導入したはずなのですから。
でも、実際は、この「当たり前のこと」が案外おろそかにされているのではないでしょうか。
この間、ISOの認証を返上した組織の方々とお話をする機会が何回かありました。「ISOは効果がなかった」とおっしゃるので、「そもそもどんな効果を期待してISOを導入されたのですか」と質問すると、「品質の向上を期待して」等の抽象的な回答しか返ってこないことが少なくありません。まして、「では、ISOマネジメントシステムを導入することで、マネジメントをどのように変えようと思われたのですか」と質問すると、極端な場合は、質問の意図すら理解いただけないこともあります。
「仕事に役立つ(ISO)マネジメントシステム」とする ・・・ ついでに言えば、マネジメントとは「仕事をうまく進めるための働きかけ」のことであり、マネジメントシステムとはそれを仕組みにして誰もができるようにしたものでしょうから、「仕事に役立つマネジメントシステム」という表現をすること自体がおかしなことなのですが ・・・ あるいは「(ISO)マネジメントシステムを仕事に生かす」とは、「何らかの意図した結果を実現するために現行のマネジメントシステムを改善する」ために「ISOマネジメントシステムを活用する」ということでしょう。
そのためには、1)実現したい「結果」は何か(例えば解決したい問題は何か) 2)そのためにマネジメントをどのように改善しなければならないのか(現行のマネジメントの解決すべき問題) が明らかにされなければなりません。
そんなことは「当たり前だ」とおっしゃるでしょうか。
この間、規格改訂対応セミナー等で、参加者から「2015改訂を仕事に活用するために、どうしたらよいか」という質問をいただく都度、「では、まず、あなたの組織では何を解決したいのか」と問い返すようにしていますが、そこで「詰まってしまう」ケースが少なくありません。
また、ドラッカーの言葉をヒントに、マネジメントシステムを「セールス」するのではなく「マーケティング」しなければならない、規格から出発したら「セールス」になる、組織が求めるものから出発して「マーケティング」しなければ ・・・ という問題提起をすると、参加者からは概ね共感が寄せられるのですが、「マネジメントシステムをマーケティングする」とは、組織の意図した結果に焦点を当てることに他なりません。
2015規格改訂対応にあたって、まずは、マネジメントシステムの意図した成果として何を設定するのか、そのために現行のマネジメントシステムのどこをどのように改善しなければならないのかを明らかにすることが必要ではないでしょうか。