ここがポイント、QCツール 第14回 QC七つ道具(4):管理図 (2017-1-16)
2017.01.16
QC七つ道具の4回目は,管理図を取り上げます。
■□■ 管理図 ■□■
●管理図とは,その目的
管理図は,「工程異常の検出を目的として用いる,プロセスの変動を視覚化するための図。」(文献4)を言います。
JIS Q 9024:2003では,管理図を「連続した観測値又は群にある統計量の値を,通常は時間順又はサンプル番号順に打点した,上側管理限界線,及び/又は,下側管理限界線をもつ図」(文献1)と説明しています。
また,JIS Z 8101-2:2015では,「連続したサンプルの統計量の値を特定の順序で打点し,その値によってプロセスの管理を進め,変動を維持管理及び低減するための図。」(文献5)と定義しています。
管理図は,折れ線グラフに中心線と合理的に決められた管理限界線を記入し,プロセスの変動を図表現により視覚化することによって,処置が必要な工程異常を早期に検出するなど,プロセスの管理・改善を的確に実施するために有効なツールとして使われています。
●管理図の実施手順の本質
管理図は,第一線職場における工程管理の基本として活用されています。
工程管理を行う際,管理の対象となる仕事の結果(特性値)がどのような要因によってばらつくのかという構造を理解することが必要です。
そして,適切な(過度でない現実的な)標準化を行い,それを順守した工程で発生したばらつきに対して,管理状態(偶然原因のみで工程が変動)で,かつ十分な工程能力を維持できれば,品質保証を確実に実施することができます。
管理図は,工程における特性値のばらつきを,偶然原因によるものと,工程に入り込む無視できない異常原因によるものとを識別し,工程異常をいち早く検出するためのツールとして有効です。
工程を変動させる要因は,標準を順守していても生じるやむおえない偶然原因によるばらつきと,工程に何らかの異常が起こったときに発生する見逃せない異常原因によるばらつきの2つに分類できます。
偶然原因による場合は特別な処置をとらず,異常原因による場合は原因を追究し(例えば,標準があるのか・ないのか,標準を順守したか・不順守か,標準は妥当か・不備かなど),原因を除去します。
工程を適切に管理するうえで,偶然原因のみでばらつくように工程を比較的均一な条件にしたブロック(群)に区分し,ブロック内の変動を群内変動,ブロック間の変動を群間変動という概念を導入しました。
工程について最も多くの情報が得られる平均値と範囲の管理図(X bar-R管理図)は,X bar管理図で主に群間変動を,R管理図で群内変動を見て,工程が管理状態か異常かの判定を容易にしました。
完全な管理状態では,群内変動が一定,群間変動がゼロになりますが,実務での実現は難しい状態です。
管理図を使うときに次の事項を確実に行い,本質的に活用することが重要です。
・管理図に書く特性(例えば,結果の良し悪しを適切にとらえられる管理項目)を決め,特性の性質にあった管理図を決定し,データを集めます。データは,できれば100個以上とることが望まれます。
・管理図を書き,工程が管理状態であるかどうかを判定します。ある定められた点の数において,すべての点が管理限界線内にあり,点の並び方にクセがなければ,工程は管理状態にあるとみなして,工程を維持します。
・工程が管理状態とみなされれば,規格や目標に対して満足しているかどうかをヒストグラムなどで調べます。工程能力を常に確認することが大切です。
・工程が管理状態であり,規格や目標を満足している場合は,日常的に管理するための管理図として用います。そして,日々など定期的にデータをとり管理図に打点し,管理状態が維持されているかどうかを判定します。
・工程異常を検出した場合は,異常原因を追究し,同じ原因で再び工程異常が起きないように,標準の制改定と教育・訓練などの再発防止の処置をとります。
・管理線(中心線と管理限界線)を定期的に再計算し,工程の現状に合っているかをチェックします。
・管理図を正しくかつ確実に使用するための管理標準を確立します。
管理図は,工程の解析,工程能力の調査,工程の状態の推定などを目的とする解析用管理図としても使われます。
解析対象のデータを4M(Man,Machine,Material,Method)などで層別したり,分け方(群分け)を変えたりして,どれが管理状態にないか,どこに違いがあるかなどを調査・分析します。
ばらつきが大きいもの,平均値が大きく違うものなどに対して,その原因を追究して処置をとります。
ある期間データをとり,層別や群分けに注意しながら解析用管理図を作成し,工程が管理状態と判定できて,規格を満足していれば,管理限界線を延長して管理用管理図に移行することが行われます。
●管理図の適用場面と得られる効用・メリット
管理図の主要な適用場面は,工程の管理用で用い,次いで解析用で用いることが挙げられます。
さらに,工程異常を検出したら全数検査に切り替えるなどの検査的な立場から用いることや,時系列の推移グラフとして用いることもできます。
管理図にはいろいろな種類がありますが,計量値と計数値のデータによる適用に大きく分けられます。
現場でよく使われる代表的な管理図を次に例示します。
計量値データの管理図には,平均値と範囲(X bar-R管理図),平均値と標準偏差(X bar-s管理図),個々の測定値(X管理図),中央値(メディアン管理図)などがあります。
また,計数値データの管理図には,不適合品数(np管理図),不適合品率(p管理図),不適合数(c管理図),単位当たりの不適合数(u管理図)などがあります。
管理限界線は,打点する観測値又は統計量の分布を考慮し,平均値±3×標準偏差になるように設定される場合が多くあります。
これらの管理図を使うことによって,工程の異常を検出して工程を管理状態に維持すること,層別した管理図を用いて改善点を発見すること,改善後の効果を把握することなどができます。
●他の手法との関係-特にQC七つ道具
管理図は,統計的に求めた管理線をもつ,管理・改善に用いられる折れ線グラフという性格から,グラフの仲間と捉える場合もあります。
管理図は単独で用いることができますが,工程を管理する場合は,工程異常を検出できる管理図と,分布の状態や工程能力がわかるヒストグラムの2つのグラフを併用することが有効とされています。
●実施・運用時の注意・留意事項
管理図を作成・活用するときの注意・留意事項を次に例示しますので,チェック項目として利用してください。
・どの仕事を管理するために用いる管理図であるかという目的が明確ですか?
・その目的を達成するための特性値は適切ですか?
・管理図の種類,管理限界,群分け,サンプリング間隔,測定法,書き方に問題はありませんか?
・異常が出た場合,その原因に対するアクションのとり方は決まっていますか。また,アクションによって結果が良くなっていますか?
・工程能力に変化はありませんか?
・この管理図をまだ続ける必要があるかどうかを検討していますか?
・管理図を活用するための管理標準を確立し,遵守していますか?
これらのことが満足していれば,管理図の活用が概ねうまくいっているとみなしてよいと思います。
次に,管理図に記入する必要項目を示します(文献3)。
幾分詳細なことと思われるかもしれませんが,管理図を適切に記述しないと情報を正しく読み取れませんので留意を要します。
次のことが管理図に書き込まれているかを自己点検するとよいでしょう。
・横軸に,群番号を記入します。一般的な群番号は,日,時間,ロット番号などです。
・縦軸に,統計量の目盛を入れ,中心線(CL)の位置に管理図の種類(例えば,X bar,R,s,X,np,p,c,uなど)を入れます。
・管理線を引きます。中心線(CL)は実線で引きます。また,上側管理限界線(UCL)・下側管理限界線(LCL)は,管理用管理図では1点鎖線,解析用管理図では破線にすると,管理図の目的が分かりやすくなります。管理線の右端にCL,UCL,LCLの値(例えば,CL=50.14,UCL=53.74など)を明記します。
・群の大きさ(例えば,n=5など)を管理図の上部左端に明記します。
・点がはっきりわかるように丸印を打点します。2つの管理図を対にして用いる場合は,点が混同しないように区別することが行われます(例えば,X bar-R管理図では,X bar管理図は●,R管理図は×の打点など)。
・管理限界線外に出た点は,丸などで囲み,識別します。点の並び方にクセがある場合は,該当する点を長丸で囲みます。そして,原因,現象,対策,調査内容などを付記します。なお,管理限界線上の点は,管理限界内とみなします。
・4Mの変更・変化など,工程の変化に関する特記事項を記入しておきます。品名,特性値,規格,サンプリング法,測定法,測定器,期間,工程名,部課名,作成者など,重要な関連事項の記入欄を作り,確実に書き入れます。
■参考文献
- JIS Q 9024:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善-継続的改善の手順及び技法の指針」
- JIS Z 8101-1:2015「統計-用語及び記号-第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語」
- 「QC七つ道具」,細谷克也,日科技連,1982
- 「日本の品質を論ずるための品質管理用語Part2」,日本品質管理学会標準委員会編,日本規格協会,2011
- JIS Z 8101-2:2015「統計-用語及び記号-第2部:統計の応用」
- 「新編 品質管理入門(A)・(B)」,石川馨,日科技連,(A)1964・(B)1966
村川賢司(前田建設工業)