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基礎から学ぶQMSの本質 第13回 「プロセス志向」(その2):プロセス管理 (2016-4-18)

2016.04.18

 

 

■プロセス管理の要点

前回(2016-4-12)のメールマガジンでは,プロセス志向のもとで品質をプロセスで造り込むためには,ユニットプロセスとプロセスフローのそれぞれの管理が重要であることを述べた。

 

そして,プロセスを管理するための要点として,

 

 ・プロセスの明確な定義 

 ・各単位プロセスにおける失敗の防止

 ・失敗の早期発見

 ・失敗への迅速・適切な処置

 

 

という4項目を挙げた。

この4つの要点を受けて,本メールマガジンでは「プロセス管理」について解説する。

 

 

 

■プロセス管理

 

プロセス管理は,「結果を追うだけでなく,プロセス(仕事のやり方)に着目し,これを管理し,仕事の仕組みとやり方を向上させることが大切」という「プロセス志向」の考え方に基づくマネジメントの方法と言える。

 

プロセス管理の事例として,ある製品の製造工程において,良い結果を得るために,作業者の力量,作業方法・手順,製造条件,設備・機器,原材料・部品,作業環境の状態など,いわゆる4M1Eを管理し,適当な段階で中間製品・サービスを確認し,必要に応じて処置をとる場合が相当する。

 

また,事務作業において,手続き違いや書類の間違いなど何らかのミスが発生したとき,ミスを防ぐためにチェック・チェックとチェックを強化する対策もあり得るが,ミスを発生させた原因,誘因,背景要因を突き止めて,業務結果を生んだ要因系である事務作業のプロセスを改善してミスを再発防止することがより重要で,これもプロセス管理の事例である。

 

 

 

■安定した予測可能なプロセス

 

プロセス管理は,標準を順守して業務を実施し,意図した結果が生み出されているかをチェックし,あってもやむをえないと考えられる要因のばらつきだけでプロセスが変動している状態を維持することをねらっている。

 

結果をチェックしたときに,プロセスにおいて許容できない(見逃せない)ばらつきがある異常,不適合,望ましくない事象などを検出したら,これに伴う損失や影響の拡大を防止するために,再発防止対策に先駆けた暫定処置として手直しや不適合の除去などの応急対策を行う。

これと並行して,プロセスにおけるインプット,リソース,活動,測定・管理の何が原因なのかを事実に基づき深く調査・分析して原因を取り除き,再び同じ原因で発生させないための再発防止対策を行い,速やかに安定した予測可能なプロセスに復帰させる。

 

異常などの発生状況,応急対策,原因追究,再発防止対策,効果確認,関連標準の改訂・水平展開など,異常などの検出から再発防止に至る一連の活動を組織的に行うための情報の媒体として「工程異常報告書」が使われ,この情報を組織知として活かすことが重要である。

 

プロセス管理を確実に行うことで,安定した予測可能なプロセスが作り上げられる。

 

 

■業務の質のプロセス管理

 

プロセス管理という考え方は,量産品の工程管理で有効なことは勿論,建設,ソフトウェア開発,設計・開発などのように一回限りに見える仕事において,広義の業務(仕事)の質を管理する面でより重要性が高い。

 

その事例として,ある建設会社が設計・施工したマンションが傾き,調査したところ杭工事のデータ偽装が発覚し,全棟建て替えに迫られた事件が思い浮かぶ。

 

この事件は,居住者の生活不安,建物の解体・再施工に伴う騒音・振動など地域の生活環境悪化やエネルギー消費・二酸化炭素発生など好ましくない環境負荷増大,事業者である不動産会社・建設会社・杭施工の専門工事会社の経営危機・信用低下など,甚大な影響をもたらした。

 

このケースをプロセス管理の面から見ると,建設事業の全体工程と杭工事を設計し施工する細部工程とを相互関連させて精確につかんだか,杭工事関係者の責任権限・協力方法・意思疎通を確立し履行したか,過去の経験・知識を活かし複雑な地質の杭工事で何が重点かを見極めて落ち度のない設計・施工の計画を立案したか,杭工事の設計・施工の品質を評価する項目・条件・判断基準が正しかったか,杭工事の作業標準などの関係標準を守ったか,杭工事の失敗を早期に発見して再施工・補強・工程見直しなど妥当な対策案・代替案・処置を周到に準備したか,等々への対応が十分になされていたのかを再吟味する必要性を感じる。

 

 

■業務の質のプロセス管理における原理

 

設計・開発などのプロセス管理の面での不備や脆弱性を深く慎重に考察すると,業務の質のプロセス管理に不可欠な次の4つの原理が浮かび上がる。

各々の原理に,-で示した事項は,原理を達成するための特徴的な要件である。

 

 

■第1の原理「設計・開発ステップなどプロセスの明確な定義」

 

・プロセスフローなどでプロセス(工程)の流れを定義する。

・ユニットプロセスなどで各プロセス(工程)における入力・出力・手順を定義する。

・担当・協力方法・コミュニケーションなどの役割分担を確立する。

 

 

■第2の原理「質の高い効率的な仕事の実施による失敗の防止」

 

・抜けの防止,難しい仕事や大切な仕事を特定して重視する重点管理,的確な予測・予防などができるように,優れた計画を立案する。

・標準化などによって,経験をうまく活用し,知識を再利用する。

・考慮事項の抜けの防止,関連性の正しい把握,妥当な判断などができるように,難しい仕事を容易化する。

 

 

■第3の原理「失敗の早期発見」

 

・適切なステップにおいて評価を行う。

・評価項目の抜けの防止ができている。

・使われ方を考慮した評価条件になっている。

・合理的な判断基準である。

 

 

■第4の原理「失敗への迅速・適切な処置」

 

・失敗を覚悟し,それを予測して代替案を準備する。

・起きた問題を正しく認識する。

・要因を特定できる。

・効果と副作用を予測し,妥当な対策案を案出する。

・それを確実に実施する。

 

 

これらの原理を要約したものが,本メールマガジン冒頭のプロセス管理の要点4項目である。

 

4つの原理に沿って自業務の質のプロセス管理が実行され,実を上げているかどうかをこの機会に自問自答してほしい。

 

(村川賢司)

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