超ISO企業研究会

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メルマガ① 真・品質経営

概念編 第13回 事業シナリオ実現のための品質マネジメントシステム(2015-08-17)

2015.08.17

 

 

前回のメルマガの中で

 

QMSとは,   

 

“経営者の想い・意図を可視化した事業シナリオを実現するための組織だった一貫した行動や活動である”

 

 

と述べました.

 

 

そして,その一貫した行動や活動が記載されたQMSの中身がどんな要素から成り立っているかを詳細に示したものが,2014年12月に大幅改訂・発行した「JIS Q 9005:2014 品質マネジメントシステム-持続的成功の指針」(日本規格協会)であり,超ISO企業研究会のコアメンバーが中心となって検討した規格です.

 

 

詳細は規格書に譲るとして,その概要を説明したいと思います.

 

 

 

 

 

■QMSのインプット,アウトプット

 

QMSのインプットは

 

・顧客や世間・社会,株主・投資家,従業員など,いわゆる利害関係者の期待やニーズ

・その会社を取り巻く事業(経営)環境

 

の2つとしています.

そして,QMSの直接的なアウトプットは

 

 

・(製品・サービスそのものではなく)製品・サービスの提供を通じて提供できた顧客価値

 

 

としており,その結果としてあなたの会社組織の社会における存在意義が確立されます.

 

 

言い換えれば,QMSとは,顧客を含めたすべての利害関係者の期待・ニーズを的確に捉え,それらを顧客価値に変換するプロセス,とも言っているわけです.

 

概念編第3回の顧客価値を解説するメルマガ内において,QMSを“顧客価値提供のための業務のやり方や仕組み”と,これまた違う表現をしていましたが,言いたいことは皆,同じです.

 

 

 

 

 

■顧客価値提供のためのメインプロセス

 

QMSのアウトプットである顧客価値は製品・サービスを通じて顧客に提供されます.

したがって,その製品・サービスを実現するプロセスがQMSにおけるメインプロセスであることは疑う余地はありません.

 

 

そのプロセスには,

 

・マーケティング

・研究開発

・製品・サービス企画

・設計開発

・購買

・製造・サービス提供

・検査・試験

・販売

・引き渡し・顧客支援

 

 

の9種類が存在します.

ISO9001と比べれば,マーケティング,研究開発,製品・サービス企画,販売のプロセスが追加されています.

 

ざっくりいえば,誰にどのような価値をどのように提供すればよいか,そのためにはどんな製品・サービスの仕様にすべきか,その実現に必要な固有技術をどう研究開発すべきかまでの機能を会社組織が持つことを求めています.

 

QMSが事業シナリオの実現手段であるのであれば,これは当然のことだと思います.

 

 

 

 

■製品・サービス実現のためのサポートプロセス

 

製品・サービス実現のプロセスがQMSのメインプロセスだとすれば,そのプロセスを実施するために必要となるひとやモノなどの経営資源を準備し,いつでも使えるようにしておくプロセスは,メインプロセスに対してサポートプロセスと捉えることができます.

 

メインプロセスと同様に,本サポートプロセスもいくつか種類がありますが,それは経営資源の対象ごとに,以下のように分かれています.

 

・組織の人々

・パートナ

・知的資源

・インフラストラクチャー

・業務環境

・財務資源

 

ISO9001と比べれば,管理しておくべき経営資源として知的資源や財務資源が追加されていますし,パートナに関してはパートナとの協働がより協調されています.

 

現在,知財・特許などの知的資源や強力な供給ネットワークを有すことが,市場における競争優位の確立に大変重要な要素になっていることからも,その管理の必要性を理解することができるかと思います.

 

 

 

 

■QMS自身を変えていくプロセス

 

製品実現プロセスとサポートプロセスによって製品・サービスが形作られ,これらが顧客に提供されることで顧客価値が実現されます.

 

しかし,最初からベストで完璧なQMSが確立できるわけではないので,QMS自身を変えていくプロセスが必要です.そのために,以下のプロセスが必要だと考えています.

 

・監視,測定及び分析

・QMSの改善

・QMSの革新

 

とりわけ,真新しいプロセスは“QMSの革新”だと思います.QMSを組織能力の発揮手段だと考えれば,QMSの改善とは,その組織能力の(継続的な)レベルアップを意味します.

 

しかし,QMSの革新という風に,QMSの改善と敢えて別のプロセスを追加したのは,

 

 

・今のQMSが,競争上重要な組織能力を発揮するために適切な形に本当になっているだろうか.

 

・今のQMSを一度リセットして,ゼロベースで考えたほうがよいのではないだろうか.

 

・もしかすると,QMSで発揮すべき組織能力自体を変えないといけないのではないか

 

 

ということを,半強制的に検討させるような仕組みが会社組織内に必要であると考えているからです.この部分に関しては,ISO9001の範疇を大きく超えています.

 

 

 

 

■QMSの企画と構築

 

最後に,QMSの中で最も大切だと考えているプロセスを紹介します.それは,

 

・QMSの企画

・QMSの構築と運用

 

です.とりわけ,QMSの企画が本規格のコア部分であると言えます.

 

QMSの企画は,ISO9001で“品質マネジメントシステムの計画”と表現されていましたが,それを意図的に“計画”から“企画”に変更しました.

その理由は,経営者の想い・意図の実現こそがQMSの目的であり,その意味で“企てる”という意味を持つ“企画”の方が表現としてより適していると考えたからです.

 

QMSの企画で何を実施し,何が得られるのでしょうか.

 

QMSの企画においては,

顧客価値の明確化→持つべき組織能力と活かすべき特徴の特定→事業シナリオの策定→あるべき品質マネジメントシステムの仕様の明確化

が実施されます.

 

この流れはまさにここまでメルマガ内で説明してきたことですね.

また,QMSの企画のアウトプットは“あるべき品質マネジメントシステムの仕様”となります.

これをインプットとして,QMSの構築でQMSが現実的に形づけられ,運用されるということになります.

 

 

では,QMSの企画のインプットは何でしょうか?

 

 

それはQMSのインプットと同じで,顧客を含む利害関係者の期待とニーズ,そして取り巻く事業(経営)環境,となります.

つまり,QMSの企画とは,顧客を含む利害関係者の期待とニーズや,自社を取り巻く事業(経営)環境の文脈を踏まえて,あるべきQMSを決定する,というプロセスになるわけです.

 

 

最後に(少し話題がずれますが)これに似たような話を最近,よく耳にしませんか?

そう,附属書SLにおける第4章組織の状況(Context of the organization)と内容が類似しています.

偶然にそうなっていました(でも,会社組織にとってためになるQMSを真剣に考察すれば当然かなとも思っています).

 

実は,形だけの附属書SL対応ではなく,その深淵なる意味を理解して適用すれば,実は我々の言う真・品質経営の実践につながるのです.セミナーもやっていますので,興味があれば覗いてみてください.

(金子雅明)

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