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本日から、品質部門配属になりました 第58回 『トップ診断』(その2)   (2021-07-12)

2021.07.12

    1. トップ診断で取り上げるテーマの概要

 

定例会議,マネジメントレビューの主なねらいは,日常的な課題に関する評価,対応,重点的な課題にかかわる活動の進捗,効果の正確な評価です.これに対して,トップ診断の場合には,これらの評価を通して,トップの意図の浸透度評価,現場の雰囲気の推察,トップへの意見伝達の重みを増します.その意味では,両者の取り上げるテーマは共通的なものが多くなります. 以下,トップ診断で取り上げるテーマとして,日常的な課題,全社の重点課題に関連するものを説明します.

 

    2. 日常的な課題に関するテーマの設定と品質部門の役割

 

日常的な課題に関するテーマは,基本的に,部門の定常業務,標準的な業務,部門の基本的な機能に関連します.やるべきことが明確でプロセスの標準が定まっていて,それに従って業務を遂行することが主たる課題です.例えば原価算出であれば,その標準的な手続きは定まっていて,その手続き通り遂行しているかどうかを確認します.また,製造部門であれば,標準化の徹底に基づく日常管理の遂行がそれに該当します.このようなテーマは,標準的な手続きが決まっていて,それに従えば成果が高確率で見込めるために後回しにされがちですが,それは大きな間違いです.この種の業務,機能の確実な実践により企業が成り立っていることに鑑みると,トップ診断で真っ先に取り上げるべきテーマです.これにより,このような業務の重要性が社内に伝わります.トップ診断のねらいのひとつは,トップが日々の現場を感じることです.そのために,このような日常的な課題に関わるテーマは必ず含めます.

 

具体的には,訪問先の部門が中心となり,次の点で訪問する部門のテーマをリストアップするとよいでしょう.

 (a) 訪問する部門を決め,主たる業務,機能を洗い出します.それぞれについて,下記の(b), (c), (d)を
   行います.

 (b) (a)の業務,機能に関連する目標,方策,管理項目など結果系の指標を調べます.

 (c) (b)を達成するための手続き,プロセスを定めた標準,規定を洗い出します.

 (d) (c)に基づく管理体系とその主要な活動を調べます.例えば,製造現場の日常管理における管理ボード
   などに集約されています.

 (e) (a)の主要な業務,機能のそれぞれについて,(b)の現在の達成状況,(c)標準の遵守状況などを検討し,
   トップ診断のテーマの候補とします.

 (f) トップ診断のねらいの一つは,部門とのコミュニケーションやトップが現場を感じることであり,この
   視点もいれてテーマを選びます.またトップ診断では,網羅性よりも,それぞれのテーマを深くする議
   論する方が,このねらいは達成しやすくなります.

 

上記(a)から(f)は,基本的には訪問対象部門が行います.また,選定したテーマに関わる主要なメンバーが参加します.品質部門としては,対象部門の業務,機能が,最終的な製品,サービスの品質にどのような影響を及ぼすのかを明確にする必要があります.上記(a)から(f)のうち,次を明確化し,トップ,トップ診断の運営担当者,部門に伝達します.

(a*) 訪問する部門の業務,機能が,顧客に提供する製品,サービスの品質にどのように関連するか

(b*) (a)の業務,機能に関連する目標,方策,管理項目など結果系の指標の達成状況と,顧客に提供する製品,サービスの品質への影響

これらの情報をもとに,品質部門も加わり,対象部門の標準化が十分かを考えます.また,個客に提供する製品,サービスの品質の視点から,部門内の手続き,プロセスを定めた標準,規定などの過不足を明確にします.

 

3.全社の重点課題に関するテーマの設定と品質部門の役割

 

全社の重点課題に関連するテーマで,対象とする部門に関連するものをトップ診断でテーマとして取り上げます.全社の重点課題の場合には,今までに未経験でどのように進めるのかが概ねしか見えていない場合がほとんどです.このようなテーマについて,部門を中心に進めるトップ診断で取り上げるのは,次の理由によります.

・未経験の場合には,漠然とした状況で活動を進めざるを得ない状況が多数あるため,トップの意図,意向を
 明確に伝えます.質疑応答を設けることで,トップの意図が確実に伝わるようにします.これにより,部門
 内で迷うことなく活動を推進できます.

・重点課題に関するテーマは,目標と方策というwhatとその達成のためのhowという形で伝達されます.一
 方, それらの設定時には,方策の導入能力,これによる目標達成の因果関係が不明確です.その状況を現
 場で診 断することで,数値や紙の上の報告でなく,トップがそのための能力を知ることができます.この
 ように, トップ診断ではトップと部門との連動を強く意識する点が,定例会議,マネジメントレビューと
 異なります.

品質部門は,製品,サービスの点からテーマ全体を見渡し,対象部門はどのような役割,機能があるのかを明確にし,トップ診断を助ける必要があります.例えば,ことづくり強化の一環として顧客へのソリューション提供が重点課題として与えられている場合を考えます.このような場合,その活動は部門横断型チームになります.定例会議,マネジメントレビューであれば,その関係者,すなわち,営業,企画,設計,生産,サービス提供,品質保証部門など全ての部門から担当者が参加し,テーマの進捗状況を議論し,今後の対応を決めます.これに対してトップ診断の場合には,対象部門だけを対象とするため,テーマの全容が見えなくなりがちです.それを品質という視点から,適宜必要な情報を提供するのが品質部門の役割です.

 

4.トップ診断の実施とフォローアップ

 

トップ診断の実施プログラムは,部門によって変更する必要はなく,典型的なものをいくつか設定し,それをもとに部門の性質によってアレンジして決めます.トップ診断の参加者は,基本的にはその部門の関連者です.一方,上記のように品質部門からの情報がないとトップ診断がうまく進まないため,品質部門からも参加する,あるいは,情報が適宜提供できる体制にすることが肝要です.原価についてもトップ診断のテーマに組み込まれることが多くあります.原価の場合には,共通の単位である円で測定され,その情報提供が困難ではないのでトップ診断に原価担当者が参加することはあまりありません.一方,品質は,企画,設計,生産,サービス提供などの段階で,その形態が変化しますので,これらを横串で見る品質部門からの情報提供が必須になります.またその複雑さから,現場で参加することで診断が円滑に進むようになります.

トップ診断の議事録は,基本的にそれぞれの部門が作成します.また,それぞれの部門がトップ診断での指摘事項をもとに対応します.品質部門は,必要に応じ,最終的な製品,サービスの品質の立場から,助言をするとよいでしょう.

 
(山田 秀)

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